システムが指令を発するだけで、原材料がサプライヤーから自動的に送られる。機械の間で生産情報が相互に伝達される。同一の生産ライン上で、80以上の異なる型番の製品の生産をいつでも切り替えることができる。空調の室外機の組み立てがわずか18秒で完了する――。
「メイド イン チャイナ2025」の主要課題の一つと位置づけられた「インテリジェント製造」はすでに、一部の中国企業で初期的な成果を見せ始めている。大部分のメーカーはオートメーションを実現したばかりで、今後の道のりはまだ長いが、不足点を学習しながら、アップグレードを加速し、「インダストリー4.0」の足並みに追いついていくことは可能だ。
成果を見せ始めた中国版「インダストリー4.0」
三一重工の「18号デジタル化工場」に入ると、さながらSFの楽園に足を踏み入れたかのようである。鮮花や噴水のしつらえられた環境の中で、数台のコンクリートポンプ車やショベル、クレーンが組み立てられている。何台かの小型の無人搬送車(AGV)が部品を立体倉庫から必要な場所へと運んでいる。スキャニング完了の音が鳴ると、ディスプレイに図面と操作マニュアルが表示される。
三一集団高級副総裁の賀東東氏は、「知能化改造を経て、我々は、生産の全過程の管理ができるようになっただけでなく、産業の上下流と社会資源を一つに連結することが可能となった。ユーザーは、携帯電話を通じて自らの設備の状況をいつでも知り、設備のロックや故障診断などの操作を行うことができる」と語る。
「産品の量産化 カスタム化生産サービスはインダストリー4.0の核心だ」と、工業 情報化部規劃司副司長の李北光氏は語る。「昨年確定された46件のインテリジェント製造試行モデルプロジェクトの状況から見ると、我々は『中国スタイル』の知能化改造の道を歩み出したと言える。その背後で使われているのは中国のソフトウェア ハードウェア標準であり、これは、先進国の技術アップグレード経路への設備製造業の依存を脱却するのに重要な意義を持つ」
武漢沌口経済開発区にある「美的」(Midea)の工場の知能化組立ラインでは、46台の工業ロボットが「アーム」を振るって溶接や組立、検査などの作業を整然と行っている。産品の精度は99%に達する。故障が出現すると、システムは、外部の管理員に報告のメッセージを自動で送信する。
「40億元を投入した改造の結果、生産ライン1本当たりに必要な平均人数は3分の2減り、工場全体の生産率は30%、生産量は20%高まり、ストックも半減した」と、美的集団の武漢制冷設備有限公司総経理の楊浩氏は語る。
工業の基礎能力が最大の弱点に
少数の企業はすでにインテリジェント製造の波に乗り、先頭を走っているものの、工業の基礎が不足していることで、ほとんどの中国企業は知能化生産へと短期間で直接移行することはできずにいる。1億元以上となることも珍しくない改造費用や高い技術標準で「望んでも手が届かない」と諦めてしまうだけでなく、自身の問題がどこにあり、どこから手をつけるべきかをはっきりさせることさえ難題となっている。
中車時代電気股フェン有限公司が7カ月前に建設を始動した知能工場は、「インダストリー4.0」の標準で建設された中国で初めての軌道交通生産ラインだ。
この製造センターの副主任である易衛華氏は感慨深げに、「かつて我々が思い浮かべていたインテリジェント製造は、何台かの自動化設備を買うという程度のものだった。だが実践と摸索を通じて、設備を購入するのは難しくないが、難しいのはこの設備をいかに管理するか、自社の生産の特性と結びつけて設備の効用をいかに最大限に発揮させるかであることがますますわかってきた。これを実現するためにはまず、業務の流れを整理する必要がある。この業務のために、我々は3年の月日を費やした」と語る。
「インテリジェント製造の推進過程における我々の最大の弱点は、工業化の進度で先進国とまだ大きな差があるということだ」と、工業 情報化部の苗圩部長は語る。「もしもドイツがインダストリー3.0の段階に達しているとすれば、中国の多くの企業は依然として2.0の標準にも達していない。そのため我々は『2.0』を補習しながら、3.0を推進し、さらに『4.0』の方向への発展をはからなければならない」
「中国の製造業は総体的に言ってまだ学習と模倣が多く、ブランドの蓄積や人才の蓄積、設計の蓄積、工業化に対する理解など、関連する蓄積が欠乏している」と、三一重工総裁の向文波氏も指摘する。
共同革新で「死の谷」を打破
基礎能力の欠如や発展不足は、工業化全体の進度に影響している。基礎能力の強化は根本的にはやはり革新にかかっている。
「基礎とは言うものの、企業が解決しなければならない共通の問題はやはり、最先端の能力と最もカギとなる技術にかかわるものとなる」と李北光氏は指摘する。この部分の革新の空白は多くが、大学と企業の技術開発の間に存在するが、投入が大きく、周期が長く、リスクが高いため、欧米では「死の谷」と呼ばれている。
米国とドイツはこれに対し、公益目的で非営利の研究機構を特別に設置し、汎用的な技術の支えを企業に提供している。だが中国ではこの部分の革新は空白であり、多くの企業はその発展において、「包子(パオズ)を売るのに小麦から植えなければならない」という状況に直面している。
苗部長は、実験室の産品から企業が生産する産品までの間の巨大な産業化過程を解決するため、「メイド イン チャイナ2025」は、重大プロジェクトの優先5プロジェクトを打ち出し、革新センターの建設を実施することで、産業の汎用技術の欠如という問題の解決をはかった。
一部の地方ではすでに先行 試行が始まっている。例えば長沙市政府と中国電子信息産業集団有限公司は、インテリジェント製造研究総院を共同建設した。業務ソリューションの提供や工業クラウドプラットフォームの建設運営などを通じて、工業のモデル転換 アップグレードサービスを政府や企業に提供する。
「携帯で3枚写真を撮ってアップロードすれば、2時間後には、カスタムメイドのシャツが自宅に届けられる」。長沙市経済 情報化委員会主任の鄧自力氏によると、こうした産業モデルにおいては、生地のサプライヤーや縫製工場、実体店がプラットフォームを通じて、3Dモデリングや知能試着などの技術を共有していると語る。中小企業は、単独で戦う必要はなく、重複建設を避けることができ、インテリジェント製造による急速な発展の流れに乗ることができる。
(チャイナネット)
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