持続可能な影響力を構築するため、アジア投資銀行は中国の「魚より魚を釣る術を教えるべし」という発展理念に基づき、援助方法を革新し、中国と周辺諸国の相互接続を促進し、国の「一帯一路」という長期戦略の実施を促すべきである。
アジア投資銀行の設立は世界の大国としての中国の役割と責任を具現したものであり、その背後には国家の大戦略と大きな歴史的チャンスが潜んでいる。多国間金融機関の経験と教訓を汲み取った、持続可能な影響力を発揮する「簡潔・清廉・グリーン」の多国間銀行を最終的に構築できるかどうかは、この戦略の成否にかかっている。
発展途上国に援助するに際し、アジア投資銀行は慎重になり目標をしっかりと定める必要がある。道理を言うと、一つの国に援助する以上、正しい案を練るべきで、発展の問題を表面的に取り扱ってはいけない。発案の前に援助対象の政治・経済・社会・歴史・民族などの状況に立ち入って調査するほか、社会・経済発展の一般的な法則も把握していなければならない。アジア投資銀行は各国のさまざまな発展状況や現時点の条件を重視したうえで、着実な発展理念とはっきりとした業務モデルに基づき、各国が自国に適した発展の道を探れるよう奨励し、それに手を貸し、技術レベルのソリューションの提供に専念すべきである。
発展途上国におけるインフラプロジェクトの実施で直面する試練を分析することで、アジア投資銀行は方向・作用点・大小という三つの要素から的を射た革新的な対策を講じ、できるだけ短期間で割合大きな影響力を持つことができる。
直面する三大試練
周知のとおり、インフラ施設の不足は発展途上国の経済成長を滞らせるボトルネックであり、融資難は発展途上国(特に中低所得国)に広く存在する。融資難のほか、プロジェクトの前期準備の深さと質も投資に大きな影響を与えている。
実践でわかるように、多くの発展途上国のインフラ施設プロジェクトの開発準備には次の三つの問題がある。1)数が少ない。インフラ施設に対する大きな需要が投資価値のあるプロジェクトにまだ直結できていない。2)質が低い。多くのプロジェクトが経済・財務・技術・環境などの面の厳格な審査に欠け、審査済みの一部プロジェクトにも審査の深さが足りないという問題がある。3)効率が低い。プロジェクト開発の前期の準備作業が系統性に欠け、周期が長すぎる。こうした問題が生まれる原因を探ると、アジア投資銀行は次の三つの試練に真剣に対応する必要があるとわかる。
まずは、マクロ政策面のリスクである。インフラ施設への初期投資は一般的に莫大なものであり、長期にわたる安定した資金の供給がなければ投資の回収を保証できない。後期の資金は、ユーザーの支払いと政府や公共部門の財務支援でまかなうことになる。ところが、どちらも(特に後者の場合)現地の政治周期の転換による悪影響を受けるおそれがある。リスク回避に走る傾向がある投資者は、現地の関連政策の安定性を望んでいる。インフラ施設への投資を促すために、発展計画を制定・公開するなど、適切な方法で長期的な建設に対する意欲を示す必要がある。
次に、能力不足の問題がある。政策リスクと比べ、発展途上国のプロジェクト開発に必要な能力の欠乏が際立っている。この問題は前期のプロジェクト計画、準備、後期の実施などの各段階にも現れる。具体的には2種類の問題が挙げられる。一つは政府部門の計画能力の不足。各分野のインフラ施設に大きなブランクがあることはわかっていても、いかにブランクを系統的な発展計画に組み入れられるかをよくわかっていない。もう一つはプロジェクトの実施能力の限界である。プロジェクトのコンセプトを確立しても、融資条件を満たす段階に発展させることは難しい。融資条件を満たすことは、株式投資者や銀行の貸付を獲得するための先決条件である。系統的な計画が欠けているため、一部の発展途上国は受動的になりやすく、プロジェクトごとに対応する羽目になる。これは続きのプロジェクトの実施に想定外の困難をもたらすほか、異なったプロジェクトの間の相互接続の不足・相互影響の問題も生じさせる。
そして、準備資金不足の問題。発展途上国はプロジェクトの開発準備に際し、深刻な資金不足に直面している。発展途上国のインフラプロジェクトの資金は、政府予算・開発業者のリスク投資・多国間機関の主権担保貸付と信用支持・贈与などでまかなわれている。研究結果によると、発展途上国では、インフラ施設の準備にかかるコストは投資総額の5%-10%を占めることがわかっている。つまり、2010年から2020年まで、アジア太平洋地域の発展途上国がインフラ施設に年間8000億ドルを投資すると仮定して計算すると、400億―800億ドルの準備資金が必要になる。準備資金不足の問題を解消するため、今世紀に入ってから、多くの国際協力枠組みの中に新たな融資メカニズムができた。たとえば、世界銀行のプロジェクト準備先払いメカニズムがそうである。しかし、発展途上国のインフラ施設の需要は莫大であり、準備資金に当てられる資源は「焼け石に水」と言える。
(チャイナネット)
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