学校でのいじめは、ここ数年多発する傾向にあり、重大な社会問題となっている。中国青少年研究センターが2015年、国内十省・市の小中学生5864人を対象に実施した調査によると、「学校で時々いじめられる」と答えた生徒は全体の32.5%に上った。国務院教育監督指導委員会事務室はこのほど通知を発表、全国各地の小・中学校に対し、生徒同士の間で身体・言葉・インターネットなどの方法を用い、悪意あるいじめや屈辱を与える行為をする、あるいは怪我をさせるといった校内いじめに関する特別対策を行うよう求めた。人民日報が報じた。
○少しのサインも見逃さず、注意深く観察する
小紅さんは、遼寧省凌源市にある小学校に通う5年生だ。小紅さんの母親は、少し前から、子供の口数が少なくなり、学校の成績もかなり落ちていることに気がついた。本人に問い詰めたところ、小紅さんは、「うちが商売をやっていることを知っている数人のクラスメートが、店から商品をもってこいと要求してきた。品物を持っていかないと、放課後、そのことを彼らに責め立てられ、たいてい殴られた」と告白した。「家では自分が店の商品をもっていくことが私に見つかるのではないかとびくびくし、学校では物をもっていかないとクラスメートに罵られ、殴られる。子供は、憂うつな毎日を送っている」と母親は話した。
安徽省合肥市黄山路小学校の教員葛莉莉氏は、「子供の口数が突然少なくなるのは、重要なサインであることが多い。子供が言葉で罵られる、あるいは身体を傷つけられた時、一番ダメージを受けるのは本人の自尊心で、同時に気分も非常に落ち込む。また、身体に傷跡が残る、個人の持ち物がなくなる、学校の成績が急降下する、子供が学校へ行きたがらないなどの現象も、学校でいじめに遭っているサインと考えて間違いない」と指摘した。
○子供の心を軽視してはならない
遼寧省建平県の高校に通う呉洋さんは、「学校の教師が重要視するのは成績だけで、両親は金儲けに夢中、一部のクラスメートは、たいてい何もすることがなく、徒党を組んでけんか騒ぎを起こすばかりだ。周囲のクラスメートは、さまざまな暴力的なゲームや映画・小説の世界に没頭しており、クラスメートの間でちょっとした諍いが起これば、たいてい暴力的な騒動に発展してしまう」と話した。
渤海大学の朱成科・教授は、「学校でのいじめは、いじめの当事者双方、さらには傍観者までもが、全員被害者だ。身体的な怪我だけではなく、若者の心の中にも、消し去ることが難しい大きな影が残る。また、校内いじめの加害者の多くは、『問題家庭』の『問題児』である点も見逃せない。保護者に対する教育と保護者が自ら学ぶことが、『問題児』が誕生する芽を摘む重要プロセスのひとつである」と指摘。遼寧省鉄嶺市第三中学校の郭蕾・校長は、「学校と家庭が『成績だけを重視』して、その他を軽視することと、義務教育段階においてメンタルヘルスを専門とする教員が不足していることも、重要な原因となっている」との見方を示した。
○各方面の力を結集すべき
校内いじめや校内暴力事件が何度も繰り返し起こるに伴い、社会の各界はその深刻さを認識するようになり、「もはやただごとでは済まされない」状況となっている。校内いじめの発生を防止することは、1つの体系的な作業であり、多方面・多分野が心を一つにして協力しなければならない。
校内いじめの根っこは心の奥深くにあり、責任の所在は家庭・学校・社会にある。したがって、校内暴力を撲滅し、校内いじめを一掃するためには、教育の役割を存分に発揮させなければならない。昔から、一部の学校や保護者は、「点数重視・素養軽視」「管理規制過剰・教育不足」に傾き、生徒のメンタル教育を疎かにする傾向があった。青少年は、智能面では非常に強い柔軟性を備えていることから、操作可能な規則教育や行動教育を通じ、言葉や行動で手本を示し、彼らが「超えてはいけない一線」に対する意識を培い、健全な人格を形成するよう手助けしなければならない。このため、立法化を通じて校内暴力行為に対する予防と懲罰制度を強化し、保護者や学校の安全教育・管理・防犯責任をいっそう明確にする必要がある。
現在、多くの地域では、義務教育段階におけるメンタルヘルス専門教師の配置を強化し、青少年のメンタルヘルス教育の強化に取り組んでいる。また、社会の各種予防研究機関、公益組織、専門家も巻き込み、完備された校内暴力・いじめの予防コントロール体制を一日も早く確立することが求められている。
(人民網日本語版)
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