ベトナム国会は22日に政府決議案を可決し、日本とロシアの受注が決まっていたベトナム初の原子力発電所建設計画を中止した。建設コストの増大と国内財政の悪化が原因という。日本メディアによると、官民が協力して売り込みに成功した「モデルケース」をベトナムが取り消したことは、日本の原発輸出戦略に対する非常に大きな打撃であることは間違いないという。人民日報が伝えた。
日本には原発の利用・開発で60年に及ぶ経験があり、世界トップクラスの原発技術を備えている。福島原発の事故発生後、日本では原発は基本的に稼働しておらず、国内原発建設市場が急速に縮小し、設備メーカーは苦況に立たされている。そうして、安部政権は原発の輸出を経済振興戦略の重要な柱の一つとした。過去の海外入札での失敗の教訓の総括を踏まえ、日本の電力会社9社、原発設備メーカー3社、政府系投資ファンドの産業革新機構が共同で国際原子力開発株式会社を設立し、官民一体となって海外への売り込みに力を入れてきた。日本は融資政策の見直しも行い、海外インフラプロジェクトに低金利の貸出や融資を提供した。ベトナム原発は東南アジア初の原発になる予定で、東南アジアを主要ターゲットとする日本の「高品質インフラ輸出」戦略にとって重要な模範的意義をもつプロジェクトになるはずだった。
ベトナム国会は2009年、中部のニントゥアン省での投資額約100億ドル(約1兆1340億円)の原発建設計画を可決した。このときはロシアが第1原発のユニット2基を受注し、10年には日本が第2原発のユニット2基を受注した。当初の計画では、日本が担当する第1ユニットは14年に建設がスタートし、20年に稼働する予定だった。だが福島原発の事故を受けて、新しい安全措置や立法プロセスを採用することが必要になったため、計画は延期された。ベトナムメディアの報道によれば、原発の建設コストは当初の約100億ドルから約270億ドル(約3兆618億円)にふくれあがったという。
日系企業が現在交渉中の原発輸出プロジェクトには、トルコ、リトアニア、ブルガリアなどでのプロジェクトが含まれる。
日本国内と国際社会では原発輸出戦略についての論争が続いている。福島原発事故の「後遺症」がたびたび出現し、処置や対策にさまざまな遺漏がある中、外国に原発の安全性を保証するのは、「無責任」な行いだと批判を浴びている。
11月11日、日本の安部晋三首相はインドのモディ首相と日印原子力協定に調印し、インドへの原発輸出の道を開いた。日本はこれまでずっと「第二次世界大戦における唯一の被爆国」のイメージで、国際社会では「核武装なき世界」を押し広めてきた。過去の例と異なり、「核兵器不拡散条約」(NPT)に加盟していないインドに原発を輸出するのは、日本にとって「自分で自分に平手打ちをくらわす」行為であることは間違いない。共同通信社の報道によれば、核の被害を被った広島と長崎では、失望の声のとぎれる時がないという。
ベトナム原発の取り消しは、日本のインフラ輸出の泣き所である価格の高さを反映してもいる。日本政府は15年に高品質インフラ輸出計画を打ち出し、「細やかで正確な管理」などの理念で、競争相手との差異化をはかろうとした。だが発展途上国にしてみれば、高品質は往々にして高価格を意味し、実際のニーズや受け入れ能力をはるかに超えたものだといえる。
日本の産業経済紙「日刊工業新聞」の山本行雄・元論説委員は、「アラブ首長国連邦の原発入札では、韓国企業は入札価格で日本企業を40%も下回った上、長期にわたり営業運転の安全性を保証することも約束した。為替相場の変動や地縁政治などのリスクも、日本の原発輸出が直面する課題だ」と話す。
(人民網日本語版)
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