海抜5198メートルの加吾拉山を渡ると、遠くにちらちらと灯りが見え隠れする。楊さんの瞳に喜びの色が浮かんだ。時刻は夜9時を過ぎたばかり。山道を運転してあと2時間も経たないうちに、彼は家に帰りつくことができそうだ。新華網が伝えた。
楊さんの自宅は、西蔵(チベット)自治区日喀則(シガツェ)市定日(ティンリ)県扎西宗(ザシゾン)郷にあり、チョモランマまでの距離は約50キロメートル、内陸部からチョモランマに向かう場合は、ここを避けて通れない。楊さんは郷政府所在地で多くの品を取り揃えた商店を経営している。最近、彼の店で新たなサービスが始まった。同郷の住民に代わって宅配荷物を発送・受理する業務だ。
今年9月、アリババ傘下の物流サービスプラットフォーム・菜鳥網絡科技の代理受け取りサービス「菜鳥駅站」が楊さんに眼を付けた。彼が地元で「菜鳥駅站」の営業を始めれば、地元住民の宅配物の受領・発送に極めて便利だと考えたのだ。
楊さんは、自分が県政府所在地との間を往復する機会が多いので、それほど面倒ではなく、郷里の人々の生活にとって便利になると考え、その業務を引き受けることにした。あっという間に、「扎西宗郷@チョモランマ菜鳥駅站」の看板が彼の店に掛けられた。これにより、世界で最高海抜の場所にある宅配ステーションが正式に開業した。
扎西宗郷までは山深く遠い道のりだが、ネット通販が珍しい訳ではない。だが、まるでカタツムリのような物流スピードは、地元のネット通販利用者にとっていつも頭の痛い問題だった。同郷に住む青年の李さんは、「これまで、注文した商品が定日県に届くまでに、半月あるいは20日ほどかかっていた。その後、扎西宗郷には配達されず、自分で引き取りに行く方法を考えなければならなかった」と話した。楊さんの宅配ステーションが誕生したことで、住民はこのような悩みから解放されるようになった。
宅配貨物の受け取りが便利になったことで、ネット通販を利用する人の数も増加した。楊さんは、「ネット通販を利用する人の多くは、現地の若者で、衣類や日用品、お茶、ハチミツ、高級酒など、何でも買うことができる。9月27日に最初の荷物を取り扱って以来、この宅配ステーションではすでに200件以上の荷物を取り扱った」と話した。
ネット通販は、今ではチベット住民の生活様式のひとつとなった。同自治区通信監理局によると、今年3月末の時点で、同自治区内のモバイルネットワーク利用者は163万9千人に達した。アリペイ(支付宝)がこのほど発表した過去十年の売上データによると、2015年の同自治区におけるモバイルペイメントによる取引比率は83.3%に達し、4年連続で全国首位の座をキープしているという。
(人民網日本語版)
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