視聴者の心をとらえるカギは「人情」
これまでにも、故宮関連のドキュメンタリーは数多く製作されてきた。なかには、巨額のコストをかけた大作もあり、撮影画像もとても美しい番組だった。しかし、それらは単に故宮を紹介する百科事典のようで、「人」に対する関心はなく、一般視聴者との交流ルートを断ってしまうような番組ばかりだった。一方で「我在故宮修文物」の蕭寒監督は取材に対して、「文化財そのものより、それを修復する職人に注目するほうが、より新鮮であり、最終的に、視聴者から大きな反響があったのも、登場した職人たちに対してだった。彼らは視聴者から大変好ましい評価を得ている」と話している。あるネットユーザーは、「修復職人たちは、文化財を修復するだけでなく、実際には、現代社会に生きている人々の浮ついた心を修復してくれている。職人たちは、毎日、1年中、こつこつと一つのことをしている。そのような精神は現代社会では非常に欠けており、尊敬に値する」と評価している。
同じように「舌の上で味わう中国」が大ヒットしたのも、中国のグルメそのものだけではなく、中国人の知恵や民族の特徴にもスポットを当てたからだ。
秦教授は、「どんなジャンルのドキュメンタリーにも、人情に関わる描写が必要で、それにより人々は現実の世界を一層知り、それを見直す機会を与えられるのだ」との見方を示す。
ドキュメンタリーの製作には「匠の精神」が不可欠
じっと腰かけに座って、細かい作業を黙々とする。ドキュメンタリーの中で描かれる、そんな文化財の修復職人や中国医薬の専門家のプロフェッショナルな姿勢に、多くの視聴者が感動を覚えた。このようなドキュメンタリーをカメラで記録したスタッフらも、そのような精神を追求し、実践しているのではないだろうか。
「我在故宮修文化財」を製作するために、製作チームは5年の歳月を費やして調査、研究を進め、4カ月連続で密着撮影を行い、それをわずか3話(計150分)のドキュメンタリーにまとめた。
「舌の上で味わう中国」を製作する前、製作チームは1995年から2011年まで、中国語版の人文地理学関連の書籍を全て買い、素材を収集し、ドラマとなるストーリーを探した。
中国医薬の材料は、特殊な環境で育つため、「本草中国」の製作チームは、蛇や虫などに悩まされる山奥に何日もこもって撮影した。時には、地滑りや土石流などの危険とも隣合わせだった。
ドキュメンタリーの製作に10年以上携わっている韓芸さんは、「匠の精神」には、「黙々と一つのことを行い、信念を貫く」という側面と、「向上に向上を重ねる」という側面があると指摘。「ドキュメンタリーの製作にも、『匠の精神』が欠かせない。ドキュメンタリーの製作には時間がかかり、素材の收集、実地調査に始まり、一つのシーンを撮影するために何日も費やすこともよくある。また、ドキュメンタリーで取り上げるのは一般的に普通の人々なので、カメラが回っていると、本能的に警戒心が働き、不自然になってしまう。そのため、辛抱強く彼らと接し、少しずつ慣れてもらう必要がある。そうしなければ、リアルなシーンを撮影し、真のドラマを見つけ出し、優れたドキュメンタリーを製作することはできない」と語っている。
(人民網日本語版)
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