【新華社北京12月27日】(記者/郭丹)京劇の名優で、元梅蘭芳京劇団副団長で現在、北京京劇院芸術委員会顧問・北京劇曲評論学会副会長の葉金援さんに海外での京劇の普及について聞いた。葉さんは「その地域に合った革新的なやり方で」と秘訣を明らかにした。葉さんは京劇の名家に生まれ、8歳から京劇を習い始め、第6回中国演劇梅花賞と梅蘭芳金賞をダブル受賞。京劇俳優の大物、梅蘭芳氏(故人)の末っ子である故・梅葆玖さんと共に16年間舞台に立ち、共に京劇の伝承と発展に尽力した。
京劇の海外普及は、時代の変化とともに発展、1980年代、京劇の海外公演では主に立ち回り系の曲目が中心だった。例えば、孫悟空が活躍するものや武器を使った立ち回りなど。外国の観客に中国語が分からなくても、京劇の素晴らしい動きに目を留めてもらうためだ。
しかし2000年以降、私たちの海外公演、特に中国の文化的背景と相通じるところのある国で公演するとき、公演曲目は立ち回り中心の武劇ではなく、立ち回りのほかに歌や芝居があり、ストーリーの豊かな大型演目になった。この変化はとても大きなものだ。
葉金援氏が「水滸伝・野猪林」の中で林沖氏を演じた。
たびたび日本で上演されている「三国志」「水滸伝」を例にとろう。私が京劇「水滸伝・野猪林」を日本で公演した2005年、1か月で26回、東京だけで15回の公演を設定したが、当時私は大変気をもんだものだ。このシンプルな内容の芝居を同じ都市で連続上演した場合、観客数は果たして確保できるのだろうか、と。しかし日本側主催者は自信満々にこう言った。「心配はいりませんよ、チケットはもう完売しました」。開演してみると、会場は満員御礼で我々はあっけに取られるほど驚いた。後になって、日本側の強力なマーケティング能力もさることながら、「水滸伝」「三国志」を愛する文化的背景との密接な関係について初めて知ることになった。
また日本には観劇の習慣もある。観客は初回の鑑賞で内容が理解できなかった場合、分かるまで何度でも劇場に足を運ぶ。文化を愛し、文化を極めるこのような精神は我々の学ぶべきところだ。
京劇を海外に伝えるには、その地域に合った革新的なやり方で伝えなければならない。日本には『水滸伝』『三国志』の背景があるが、中東や欧州はこれらの文化に触れたことがあるとは限らない。このため、海外に伝える場合は、海外の文化的背景の特色や中国文化を受け入れられるレベルに合わせて伝えなければならない。両国文化の共通点をもとに、創造性をもって伝える必要がある。
1995年に葉金援氏がイタリアで京劇を演じたときの写真
1995年、私はイタリアで京劇を観に行ったが、そこで演じられていたのは中国の伝統的な京劇の演目ではなく、京劇を用いてイタリアオペラで有名な『トゥーランドット』を演じたものだった。京劇の節回しでイタリアオペラを歌うのは、いささか奇抜な考えではないだろうか。しかし、実際の効果は、西欧の観衆は完全に京劇版『トゥーランドット』を受け入れ、演出は成功した。
さらに、2006年に梅葆玖先生と共にカナダで演じた『梅花香韻』においては、西洋楽器と中国の民族楽器を同じ舞台で合奏し、戯曲が持つ規範を打ち破っただけでなく、西欧の管楽器の演奏規範をも打ち破った。たった数日で演奏はすり合わされ、京劇の二胡は西欧の管弦楽器と一つになり、演出効果は思いのほか素晴らしかった。
さらに喜ばしいことに京劇の影響力が大きくなるにつれ、海外への普及のし方も変わってきている。大規模な海外の交流行事で演じられるだけでなく、海外での商業公演も増えつつあるのだ。2012年には私たちは梅蘭芳さんの生誕120周年を祝って海外で『梅蘭芳双甲之約』を上演し、民間の商業公演の道を歩み出した。
梅葆玖先生は私たちと米国のブロードウェイやジョン・F・ケネディ・センターで京劇を演じ、国際連合本部ビルにおいても京劇の公演を行なった。それによって祖国の輝かしい国粋文化を海外に伝えることができ、京劇の海外への普及の先例となった。 最後に、中国の「一帯一路」の理念が広がっていくにつれて、京劇もまた世界に広がっていくというのは、価値のあることだといえる。
ただ、どこに行くにせよ、京劇の劇団員は、常に、「外にひとたび出れば、そこは戦場」ということを忘れてはならない。公演、日常生活にかかわらず、劇団員はひとたび国外に出れば、一国の文化素養を代表している。そして中国文化のプラス面を普及させなければならない。だからこそ、劇団員は常に自身の文化素養と職業意識を高め、美しい中国の風を世界に吹きわたらせなければならないのだ。
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