銀行にお金を預けるより、ロンドンやニューヨークなど海外の都市で不動産を買おうとする中国人の買い手が増えている。「不動産銀行に預金する」というわけだ。「証券日報」が伝えた。
大まかな統計によると、今年5月11日から現在までの90日間に、中国人バイヤーがロンドンで購入した不動産の価格は36億ポンド(1ポンドは約147.3円)に上り、購入当時のレートで計算すると約317億元(1元は約16.5円)になる。
英国不動産への最大の投資家は中国だ。不動産データ会社コスター グループが発表した2017年第1四半期(1~3月)の報告書によると、中国はすでに米国を抜き、英国不動産への最大の投資家になったという。
より重要なことは、多くの業界関係者が口をそろえて指摘するように「昨年に英国の欧州連合(EU)離脱が決まると、ポンドが大幅に値下がりして、海外の投資家は取引額が相当割引されるようになったこと」だ。実際、ブルックフィールドが今年4月にビルを売りに出した際には、相場の優位性をよりどころに世界の多くのバイヤーが名乗りを上げた。
中国のここ数年の経済高度成長により多額の資産を保有する層がその規模を急速に拡大させており、海外での資産配置も重要なニーズになっている。
招商銀行とコンサルタント会社ベイン アンド カンパニーが共同で発表した報告書によると、中国の投資可能な資産を1千万元以上保有する人は10年前は18万人だったが、現在は158万人に増えた。全国の個人保有の投資可能資産の規模は165兆元に達し、最も豊かな1%の世帯が全国の富の3分の1を保有していることになる。
また16年に発表された胡潤研究院の「胡潤中国富豪100人ランキング」をみると、中国には現在、資産が10億ドル(1ドルは約110.8円)以上の富豪が594人いて、こうした層の海外投資ニーズを押さえ込むことは難しい。
英不動産コンサルタント会社ナイト フランク中国圏国際投資部の程懌責任者は、「住宅市場に対し、中国各地で購入制限政策がたびたび打ち出されるので、高額の資産を保有する人々は目を海外に向けざるを得なくなっている。ロンドンは総合的にみて金融界での位置づけ、教育文化産業、メディア、スポーツなど各方面において、中国よりも一定の優位性を備えている」と指摘する。
資産情報会社ウェルス―Xが最近発表した調査結果によれば、スイスの銀行にお金を預けるより、ロンドンやニューヨークなどの国際的大都市に高級住宅を買いたいと考える富豪が増えており、さながら「不動産銀行に預金する」ようなものだという。
これはつまり、世界のスーパー富豪たちの資産保有の手段に大きな変化が生じ、世界トップクラスのタックスヘイブンとされてきたスイスの銀行の貸金庫が各国の高級住宅へと変わりつつあることを示している。調査によると、現在、世界のスーパー富豪は21万人程度(地球の総人口の0.0028%)に過ぎないが、世界の富の12%を保有しているという。
程責任者も、「英国のEU離脱の過程でも、ロンドンの不動産価格が大きな影響を受けることはない。またロンドンの不動産の保有期間は999年で、頭金は10%を支払えばよく、ローンの割合は75%と高く、ローン金利の低水準といった優位性により、さまざまな世界の資産や投資家がロンドンに引き寄せられている」と話す。
英不動産情報会社ホームトラックの最新の予測報告書では、「EU離脱、ハング パーラメント(与党の議席が議会の過半数に達していないこと)、テロリズムなど一連の要因の影響はあるが、17年の英国不動産価格は全体として引き続き6~7%上昇し、昨年12月に発表された予測値の4%を上回るとみられる。だがロンドンの業績は可もなく不可もなくで、17年上半期の不動産価格上昇率は2.9%にとどまるだろう」と予想する。
業界関係者は、「お金をロンドンの『不動産銀行に預ける』ことは、中国国内でのリスクに対するリスクヘッジであり、毎年賃貸料で4~5%の利益が上がれば、気楽で損のない取り引きになる」と話す。
(人民網日本語版)
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