EC産業がオフラインの世界にやってきたら、どんなことになるだろうか。スーパー、書展、携帯電話販売店、ホテルなどと同じようになりそうだが、実はそうではない。このほど顔認識システム、ビッグデータによるおすすめ機能、WiFiと画像識別システムに基づいて人の動きを感知するセンサーなど、数々の最先端の科学技術に彩られた大手ECプラットフォーム・京東のオフライン小売体験店舗「京東之家」がオープンした。京東は年内に同様の店舗を300店まで増やすとしている。もう一つのEC大手・網易厳選は人々の想像力に働きかけ、業界の枠を超えて「利用しながら買い物もできる」ホテルをオープンした。体験型消費や特定シーンの中での消費が登場し、「新機軸」が次々誕生する小売産業は今、従来の枠を打ち破り、多方面と融合する新たな変革の波を起こしている。「北京日報」が伝えた。
▽京東之家 入店すると顔を識別して商品をおすすめ
顧客が入店する際、入り口にあるモニターの前で数秒間立ち止まると、顔が認識され、興味を感じそうな商品が画面に映し出される。また顧客に合わせて、「仕事人間」、「科学技術マニア」、「真夜中のショッピング愛好家」、「家事の達人」といったキーワードが出現し、コンビニの店員が好きそうな商品を選んでくれる。
このような科学技術感満載の買い物シーンは、北京市の通州万達広場にある京東之家で体験することができる。ここでは顧客が初めて来店すると、モニターが顔写真を撮影し、顧客がQRコードを読み取って確認すると、あっという間にこの店の登録会員になる。次回の来店時には、顔情報が「会員カード」代わりになり、モニターが誰であるかを自動的に識別する。
京東之家には青々とした植物や木目調の陳列棚などが置かれ、一般的な携帯電話売り場や電子製品売り場と異なり、フレッシュなムードが漂う。商品は単純にブランドごと、品目ごとに並べられてはおらず、旅行、健康、女性などさまざまなシーンやテーマに沿って陳列されている。
出店時には、入り口の2台のモニターがリアルタイムで記録を取り、入店時と出店時の人数、性別、年齢層、滞在時間などがすべて記録される。
▽網易厳選のホテル ホテルが体験店舗に変身
「昨日泊まったホテルのベッドのマットレスがよかったので、うちでも同じのがほしいけれど、ホテルでは売っていない」。「ホテルのベッドの枕元にあったスマートスピーカーがとてもすてきだったので、うちに持って帰って使いたい」。ブティックホテルによく泊まるビジネスマンや旅行好きの人は、こんな思いをしたことが何度もあるに違いない。
EC大手・網易厳選はこのほどアトゥールホテルと提携し、全国初の「利用しながら買い物もできる」新業態のホテルを打ち出した。ここではネックピロー、タオル、アロマディフューザー、バスローブ、湯沸かしポット、マグカップなど、ホテルで使用するほぼすべての物品を買い取って持ち帰ることができる。持ち帰りが不便なら、携帯電話のアプリケーションで注文すればよいし、ホテルに梱包して送ってもらってもよく、出張や旅行が終わって家に帰ればほしかった物品がすぐに届く。
ホテルの部屋はECプラットフォームのオフライン体験店舗であると同時に、ECのモチーフを宿泊シーンに組み込んだことが、伝統的宿泊モデルを打ち破り、宿泊者各人の個性に配慮した宿泊体験で顧客を誘致する「伝家の宝刀」になっている。アトゥールホテルの責任者は、「新たなホテルの時代にあって、これまでのようなハードウェアと標準化されたサービスで顧客を獲得してきたモデルではもうグッとこない。これに代わるのは個性化だ」と話す。
▽体験型消費が「決定的役割」担う
過去数年間、EC産業は買い物の価格や方法に対する考え方をひっくり返してきた。だがECフローのメリットが徐々に限界に達すると、顧客は動かなくなった価格、包装、パラメーターよりも、消費の「体験」や「シーン」に注意を向けるようになってきた。質感を確かめ、機械なら動かしてみる。こうしたささやかな体験の断片こそが、買うかどうかを決める際に「決定的役割」を果たす。
第一財経が発表した「中国新中産階級の質重視の暮らしの報告」によると、回答者の75%が「よりよいサービスや双方向の体験を追求するためなら出費をいとわない」と答え、62%が「実店舗での体験をより重視する」と答え、約60%が「個性化されたサービスを受けられるので特定のブランドを好んでいる」とした。
ますます「目が肥える」消費者に向き合って、EC産業がオンラインの世界から実店舗化の道を進むその背後には、大手プラットフォームが自身を進化させるだけでなく、従来型の商店にエネルギーを与えることで、より広い範囲で小売産業の変革をもたらしつつあるという流れがある。
(人民網日本語版)
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