冷蔵庫を開けて食材を取り出すとき、冷蔵庫に向かって「魚香肉絲の作り方は?」と言うと、冷蔵庫のパネルに作り方を教える映像が出てくる。スマホで入浴の時間と水温を設定すると、浴室の照明が自動的に点灯し、バスタブに水が入り、調温する……
このようなシーンはこれまで、SF映画だけで見られるものだった。しかしスマートホーム産業が発展する現在、それは映画のスクリーンから飛び出し、一般の人々の日常風景になりつつある。
IT大手がシェア争い アマゾンが1年に1度開催する大セール「プライムデー」において、「Echo Dot(エコー ドット)」と呼ばれる音声アシスタント内蔵スピーカーが人気を集めた。音声アシスト機能を通じ、ユーザーはスピーカーとの会話を通じて今日のニュースや家族の伝言を受け取ることができる。アマゾンが販売価格を抑えたことで、この商品はプライムデーでの売上高が昨年の6倍以上に跳ね上がった。
統計サイトのStatistaのデータによると、2016年の世界スマートホーム市場規模は168億ドルに達し、2021年には793億ドルになると予測されている。
市場の動きに呼応するように、今年に入り世界のIT大手が続々とスマートホーム事業に参入しており、この市場をめぐるパイの奪い合いが始まっている。アメリカ特許庁は先ごろ、「ディープラーニング設備インタラクション規則」と呼ぶ特許の申請を発表したが、この発明はすでにアップルによって買われている。同特許は、単体のデバイスでスマートホームシステムを操作できるもので、今後はテレビから電子レンジなど様々なスマート家電設備の操作に使われる可能性が高い。マイクロソフトも最近、「GLAS」と呼ばれるスマート温度調節器を開発。マイクロソフトの音声アシスト「Cortana」を搭載するこの製品は、部屋に人がいるかどうかや室内空気の品質を自動的に測定することができる。
中国市場のポテンシャルは無限 世界のスマートホーム産業の台頭は、中国市場の発展も促している。業界の40年近い起伏を経て、今や中国は堂々たる家電大国になっている。しかし、「家電強国になる」という目標を達成するために、スマート化は避けることのできない関門である。
国務院は先ごろ、「新世代のAI発展計画」を発表した。中国で最初の国家レベルのAI発展中長期計画である同文書は、AIを核心とする産業を2020年までに1500億元規模、関連産業で1兆元規模以上に引き上げるとしている。また2025年までに、新世代AIをスマート製造、スマート医療、スマートシティ、スマート農業などの分野で広く応用し、AIを核心とする産業を4000億元規模以上にするという。
AIの発展は、必然的にスマートホーム産業も迅速に発展させるだろう。良好な発展見通しと政策環境の下、スマートホームは中国家電業界でも注目されている。ハイアールや美的といった大手家電メーカーから、ファーウェイや百度などIT企業が、続々とスマートホーム産業に参入している。
先進諸国と比較して、中国のスマートホーム産業はスタートが遅れている。しかし巨大な市場ニーズから、最大のポテンシャルを持ち、最速で成長する産業となっている。「易観シンクタンク」のデータによると、2018年までに中国のスマートホーム産業は1800億元規模になり、大量の資本投入と企業参入が予想されている。市場は百家争鳴の局面を迎えそうだ。
その反面、中国のスマートホーム産業には欠点も少なくない。たとえば技術面である。核心となるアルゴリズム、キーデバイス、ハイエンドチップなどにおける革新的成果は比較的少ない。またスマートホーム産業の急速な発展に応えられる人材の蓄積も少ないのが現状だ。
さらに重要な問題として、中国のスマートホーム産業はいまだ「コンセプト営業」の段階に留まることが挙げられる。実際、本物のスマートホームはひとつの「システム工程」といえる。一部の家電や家具のスマート化だけでは全く足りず、シームレスな体験こそが必要とされる。それは、これまでの中国家電産業の、冷蔵庫やテレビなど単一製品で天下を取るモデルを覆す動きだ。そう考えると、中国のスマートホーム業界の道のりはまだまだ長いといえるだろう。
(チャイナネット)
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