日本の文部科学省はこのほど、来年度から使われる高校教科書の検定結果を公表した。検定を通過した教科書の歴史と領土の問題における立場には後退が見られた。日本問題を長期にわたって研究する国際関係学者は記者の取材に対し、日本政府のこの動きは、国内の民衆とりわけ青少年を誤った方向へ導き、歴史と領土の問題に対する間違った認識を固定化するねらいがあると指摘している。
清華大学の劉江永教授によると、第2次大戦後初期の日本の学者が書いた教科書は、軍国主義に対する批判と反省が見られるもので、「三光政策」や細菌戦についても記載があった。だが日本国内で政局が変化すると、一部の人が歴史的な過ちをとりつくろうとし始めた。この過程は1950年代中頃、安倍晋三首相の母方の祖父である岸信介氏が首相に就任した頃から始まった。「それから現在まで、日本の教科書は検定を受けるたび、歴史問題での後退を見せてきた」
劉江永氏によると、1990年代、日本の右翼の学者によって「新しい歴史教科書をつくる会」が設立された。当時の日本の大部分の教科書は、これらの人が編纂したものとは異なり、右翼勢力の教科書の発行量はまだ小さかった。だが南京大虐殺を「南京事件」と書き換えて大虐殺という性質をあいまいにするなど、悪い兆しはもうあらわれていた。「今回検定を通った教科書は、日本の右翼の教科書により近いものとなった。政府の誤った観点に従って書かず、右翼の教科書に足並みをそろえなければ、認可を受けられず、販売することもできない」
今回の教科書のうちで領土問題にかかわる部分について、劉江永氏は、釣魚島及びその付属島嶼に対して中国は固有の主権を持っており、釣魚島が中国に属することに議論の余地はない。中日両国は国交正常化の際、釣魚島問題をいかに処理するかについて合意を達成しており、政治的な暗黙の了解があった。だが日本側は現在、この暗黙の了解を認めていない。「今回検定を通過した教科書は釣魚島を日本の『固有の領土』としている。しかもすべての教科書がそう記述しており、学校にほかの選択はない。日本の若者を誤った方向に導く深刻な影響をもたらすことは間違いない」。劉江永氏は、日本側のこうしたやり方は、中国に対する若い世代の反感を生むことにつながりかねず、未来の中日関係の発展にとっての大きなリスクであり、重視する必要があると訴える。
「領土問題について安倍政権の取っている策略は、我々が皆知っているありふれたものだ。嘘も千回繰り返せば真理となる」。外交学院の周永生教授は、日本政府のこうしたやり方は歴史的な責任感を甚だしく欠き、個人の利益のためにすべてを無視するものだと指摘する。
劉江永氏によると、教科書問題での安倍内閣のやり口は、日本の平和憲法の改定を推進する取り組みとつながっている。この動きは実際には、憲法改正でまもなく投票権を得る若者に間違った思想を教え込み、精神的な動員をはかるものである。
周永生氏は、日本の教科書改訂は表面的には内政問題に見えるが、若い生徒をとっかかりとして間違った認識を固定化しようという安倍内閣のたくらみを示していると指摘する。日本と隣国との関係に不利な影響を生み、歴史と領土の問題での対立感情の長期化を導き、未来の中日関係の発展に試練を投げかけるものとなることは間違いない。
(チャイナネット)
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