【新華社南京7月14日】一価銅系の吸着剤は工業的に有望だが、空気中で酸化しやすいという弱点がある。中国の南京工業大学の研究者は、吸着剤の微小環境を調整することで、一価銅をコーティングし、保存可能期間を2週間から6カ月に引き延ばした。研究成果はこのほど、英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
論文の責任著者である同大吸着分離技術研究所の孫林兵(そん・りんぺい)教授によると、石油化学工業分野では、吸着剤がガソリン中の硫黄含有不純物の除去や硫黄含有ガスの排出を削減することができる。オクタン価を下げることがなく、環境にも優しいという。
孫氏は、市販ガソリンのオクタン価は92や95などで、数字が大きいほど燃焼効率が良く、アンチノック性に優れ、エンジン圧縮比も大きくなり、パワーを上げつつ燃費を下げることができると説明。「現在は水素化脱硫触媒が不純物除去の主流だが、高温高圧などの過酷な条件を必要とする欠点がある。これに対し、一価銅は吸着力が強く、安価で、常温常圧下で使用できるため、幅広い応用が見込める」と語った。
論文筆頭著者の李玉霞(り・ぎょくか)氏は「一価銅は空気中で酸化して二価銅に変わりやすいため、このタイプの吸着剤には空気を遮断する材料を使う必要があり、それが全体的なコスト上昇を招き、製品の応用を制限してきた」と述べた。研究者らは、一価銅の微小環境を調整して、吸着剤の表面特性を親水性から疎水性に変え、水分子が一価銅の活性部位に接触しないように改良。これにより、一価銅が安定した状態で酸素中に存在できるようになった。
実験の結果、従来の一価銅系吸着剤がわずか2週間で吸着・脱硫性能をほとんど失っていたのに対し、コーティングした一価銅系吸着剤は、空気中で6カ月間、性能を保つことができた。孫氏は「これで保管コストが大幅に削減され、工業生産が容易になる」との見方を示した。(記者/陳席元)
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