【新華社成都8月8日】中国四川省地質工程実地調査院職員の楊進氏は7日、四川省九寨溝景勝地で「九寨溝の山の斜面に地滑り防止ネットを設置する際、樹木が生えている箇所のネットを切り開いて、植物が生長する空間を確保する」と紹介し、この方法で土壌災害の危険性を未然に排除すると同時に、九寨溝の生態系を保護できると述べた。
四川省九寨溝県で2017年8月8日に発生したマグニチュード7・0の地震では、29人が死亡し、30万ムー(約200平方キロメートル)近くの森林地と20万ムー(約133平方キロメートル)余りの野生動物の生息地が被災した。震源地から九寨溝景勝地の中心地域まではわずか5キロで、世界自然遺産の九寨溝に大きな被害をもたらした。火花海、珍珠灘、諾日朗滝などの景観区はそれぞれ異なる程度の損害を被った。
九寨溝管理局科研処の朱忠福シニアエンジニアは「世界自然遺産における被災後の保護と回復は、世界でも例がない」と述べた。
九寨溝県環境保護・林業局の関係者によると、九寨溝の生態系回復保護について現地では、自然を重視しながら保護を進めている。また生態系に余地を残して、自然の生態系と人類の活動範囲に境界を定め、自然回復を主とし人工回復を補助的に行う方法を堅持している。
九寨溝の多くの湖で地震後、湖水の混濁現象が発生し、各方面に不安が広がったが、先日の現地取材では、双龍海、五花海などの湖はすでに、地震前の澄みきった真っ青な水質に回復していた。九寨溝管理局科研処の杜傑処長によると、九寨溝の自己浄化メカニズムが重要な役割を果たしているという。
九寨溝の水系は森林、地下水流、湖の三層のろ過を経ている。九寨溝管理局地質災害観測員の任貴元氏によると、五花海の中央付近の湖底から、澄みきった水が数カ所湧き出し、絶え間なく五花海に流れ込んでいるという。
幅270メートル、落差24・5メートルの諾日朗滝は一年前の地震で長さ16・5メートルに渡って亀裂が出現し、滝に水流の割れ目が生じている。杜氏は「専門家が諾日朗滝の被害状況について評価した結果、もし修復を行わないなら、諾日朗滝は余震と水流の浸食により崩落が続き、19の湖と鏡海に影響を及ぼすと指摘している」と述べた。
裏付けを経て、専門家グループは被災した石灰華(炭酸カルシウムの沈積物)を砕いたものを諾日朗滝の裂け目に充填し、破壊された生態系の修復を行い、滝の従来の自然を最大限に保証している。杜氏は「滝の水流が回復した後、石灰華は再び沈積を続けるため、われわれは今後も自然回復状況の監視測定を継続する」と述べた。
太陽光線の屈折と反射が火花のようにきらめく光景で有名な火花海景観区は、地震による堤防決壊で流出した湖水が双龍海に流れ込み、下流で長さ85メートルの双龍海滝が出現した。杜氏は「一年間観察したところ、双龍海滝は基本的に安定しており、九寨溝の新しい景勝地になっている」と語った。
地震後、火花海の湖底にはわずかに1本の渓流が残り、湖中の石灰華が露出した。露出した石灰華はたちまち乾燥し、容易に風化浸食を受ける。九寨溝管理局科研処の朱忠福シニアエンジニアは「われわれは現時点では、亀裂監視装置などを用いて火花海の監視測定を行い、浸食が発生していないか、上流の湖の安定性に影響していないかを判断している」と述べた。
人為的な行為による影響を最大限に減らしながら行う、九寨溝県4地域の植物と野生動物生息地の修復プロジェクトにおいて、自然回復した植物の割合は6割を超えた。また震災被害を受けた植生の回復には現地の土壌と樹木を使用し、自然状態での種別構成を十分考慮し、多様性を確保している。造林事業では土のう積層工法と木柵設計を採用し、つる植物で人工構造物を覆い、工事の補助材料は全て自然分解素材を使用している。
朱氏は、世界自然遺産保護と回復の科学研究プロジェクトが、震災復興プロジェクトに組み込まれるのは、中国の震災復興で今回の九寨溝が初めてだと指摘した。(記者/周相吉、李力可、薛晨)
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