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内田樹氏 マルクスを読むことは、知的成熟への一階梯
jp.xinhuanet.com | 発表時間 2018-05-11 11:17:57 | 新華社 | 編集: 郭丹

 

中国語版、「若者よ、マルクスを読もう」と「マルクスの心を聞く旅」

【新華社北京5月11日】(記者/郭丹)今年5月5日はカール・マルクスの生誕200周年記念日だ。中国でこのほど出版された日本語からの翻訳本、「若者よ、マルクスを読もう」、「マルクスの心を聞く旅」の二冊に注目した。なぜマルクスの著作やマルクス本人の歴史をめぐる書籍が資本主義社会の日本でベストセラーになったのか。その魅力は何だろう。それで著者の1人であり、日本神戸女学院大学文学部教授の内田樹氏に書簡で特別取材を行った。

【記者】いつごろからマルクスの著作を学び始めましたか。また、その魅力は何だと考えていますか。

【内田氏】最初にマルクスの著作を読んだのは高校1年生の時です。「共産党宣言」でした。マルクスの著作で私が一番好きなのは「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」で、これはロンドンに滞在していたマルクスが、ニューヨークの友人の依頼で在米ドイツ語話者向け雑誌に書いた、フランスの政治事件についての分析記事です。この入り組んだ執筆事情のせいで、マルクスの天才的な「説明能力の高さ」が遺憾なく発揮されています。その時代のアメリカやヨーロッパで、同じ条件で、これだけ明快で深遠な分析記事を書けるジャーナリストがいたかを考えてみると、マルクスの偉大さが分かると思います。もう一つの魅力は、マルクスの文体です。その疾走感や比喩の鮮やかさ、畳みかけるような論証、驚くべき論理の飛躍によって、独特の「感」を体験することができます。いささか不穏当な比喩ですが、マルクスのテキストはロックンロールなのです。その語りについていくだけで頭が熱くなるような感じです。

【記者】マルクス主義の日本への影響、特に現在の日本への影響についてご説明いただけますか。

【内田氏】日本では、1920年代から現代に至るまで、マルクス主義を掲げる無数の政治組織が絶えず存在し、マルクス主義に基づく政治学や経済学、社会理論が研究され、講じられてきました。また、戦後日本で行われた社会運動の多くもマルクス主義の旗の下に行われました。70年代以降、日本国民がアメリカからの自立をめざす感情が、「経済力でアメリカを圧倒する」という熱狂的な経済成長至上主義へと変化しましたが、マルクスが完全に日本で禁止されたわけではありません。多くの国民は、マルクスの著作を「教養書」として読まれてきました。ですから、日本において、マルクスの著作を読むことは「知的成熟への一階梯」だとされている。

【記者】マルクスの著作をたくさん読んだことがあると思いますが、マルクスの著作が若者にとって、どのように役にたちますか。【内田氏】僕たちはマルクスを読んで、広々とした歴史的展望の中で、深い人間性理解に基づいて、複雑な事象を解明することのできる知性が存在するということを知ります。

 若者たちが知性的・感性的に成熟し、深く豊かな人間理解に至るために、マルクスはきわめてすぐれた「先達」だということだけ申し上げておきます。このアドバイスは、どの時代のどの国の若者たちに対しても等しく有効だろうと僕は信じています。

 

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内田樹氏 マルクスを読むことは、知的成熟への一階梯

新華網日本語 2018-05-11 11:17:57

 

中国語版、「若者よ、マルクスを読もう」と「マルクスの心を聞く旅」

【新華社北京5月11日】(記者/郭丹)今年5月5日はカール・マルクスの生誕200周年記念日だ。中国でこのほど出版された日本語からの翻訳本、「若者よ、マルクスを読もう」、「マルクスの心を聞く旅」の二冊に注目した。なぜマルクスの著作やマルクス本人の歴史をめぐる書籍が資本主義社会の日本でベストセラーになったのか。その魅力は何だろう。それで著者の1人であり、日本神戸女学院大学文学部教授の内田樹氏に書簡で特別取材を行った。

【記者】いつごろからマルクスの著作を学び始めましたか。また、その魅力は何だと考えていますか。

【内田氏】最初にマルクスの著作を読んだのは高校1年生の時です。「共産党宣言」でした。マルクスの著作で私が一番好きなのは「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」で、これはロンドンに滞在していたマルクスが、ニューヨークの友人の依頼で在米ドイツ語話者向け雑誌に書いた、フランスの政治事件についての分析記事です。この入り組んだ執筆事情のせいで、マルクスの天才的な「説明能力の高さ」が遺憾なく発揮されています。その時代のアメリカやヨーロッパで、同じ条件で、これだけ明快で深遠な分析記事を書けるジャーナリストがいたかを考えてみると、マルクスの偉大さが分かると思います。もう一つの魅力は、マルクスの文体です。その疾走感や比喩の鮮やかさ、畳みかけるような論証、驚くべき論理の飛躍によって、独特の「感」を体験することができます。いささか不穏当な比喩ですが、マルクスのテキストはロックンロールなのです。その語りについていくだけで頭が熱くなるような感じです。

【記者】マルクス主義の日本への影響、特に現在の日本への影響についてご説明いただけますか。

【内田氏】日本では、1920年代から現代に至るまで、マルクス主義を掲げる無数の政治組織が絶えず存在し、マルクス主義に基づく政治学や経済学、社会理論が研究され、講じられてきました。また、戦後日本で行われた社会運動の多くもマルクス主義の旗の下に行われました。70年代以降、日本国民がアメリカからの自立をめざす感情が、「経済力でアメリカを圧倒する」という熱狂的な経済成長至上主義へと変化しましたが、マルクスが完全に日本で禁止されたわけではありません。多くの国民は、マルクスの著作を「教養書」として読まれてきました。ですから、日本において、マルクスの著作を読むことは「知的成熟への一階梯」だとされている。

【記者】マルクスの著作をたくさん読んだことがあると思いますが、マルクスの著作が若者にとって、どのように役にたちますか。【内田氏】僕たちはマルクスを読んで、広々とした歴史的展望の中で、深い人間性理解に基づいて、複雑な事象を解明することのできる知性が存在するということを知ります。

 若者たちが知性的・感性的に成熟し、深く豊かな人間理解に至るために、マルクスはきわめてすぐれた「先達」だということだけ申し上げておきます。このアドバイスは、どの時代のどの国の若者たちに対しても等しく有効だろうと僕は信じています。

 

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