今年第1四半期(1-3月)の中国経済の好調さが、世界中を一安心させた。だが疑いの気持ちをもち、「虫眼鏡」を債務問題に当てるようになった人もいる。海外機関のアナリストがこのほど発表した論説によると、今の中国経済には1兆ドル(1ドルは約107.1円)に達する不良債権があり、この悪循環をうち破らなければ、金融危機が避けられない結果になる。少なくとも経済の大幅な落ち込みが避けられない結果になるという。専門家はこうした見方について、「債務や不良債権は経済の正常な運営プロセスにみられる正常な現象だ。中国には巨額の資産項目と付加価値による利益があり、中国の「バランスシート」は実際には健全だ。単純かつ一面的に債務を過大視したり誇張したりしてはならない」と話す。「人民日報」海外版が伝えた。
▽債務リスクを考える
皮膚の最上層には「角質層」と呼ばれる層がある。死んだ細胞が積み重なったもので、これによって身体が正常に新陳代謝していることがわかり、皮下組織を感染から守る働きもしている。顕微鏡で角質層の死んだ細胞だけを見て、その生命体が不健康であると判断したなら、ごく一部分だけを見て全体を判断するという危ういことだといえる。
債と経済の関係を分析するのも同じようなことだ。天津財経大学経済学院の叢屹教授は、「発展途上国は往々にして急速発展期に大量の投資によって発展を牽引する。だから規模の大きな債務ストックが形成されるのは正常な現象だといえる。中国の債務に西側の基準を単純に当てはめられないということ、国内総生産(GDP)や税収で債務リスクをはかれないということ注意が必要だ。実際、債務の後で生まれた巨額の資本項目は軽視できない。こうした資産はキャッシュフローをもたらすだけでなく、資本の付加価値による利益を生み出すからだ。これも中国の独特なところだ」と話す。
米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスのバイスプレジデントのアツィ・シェス氏は、「中国の高水準の債務は一定のリスクにはなるが、世界経済の危機を引き起こすことはない。中国の経済成長は引き続き十分に力強く、債務のうち大部分は国内の貯蓄をよりどころとした内債だ。よって中国当局は債務問題をコントロールし、経済という巨大な船を安定させる能力があるといえる」と話す。
▽経済バージョンアップの歩みは続く
それでは「中国の不良債権」は実際にはどれくらいのリスクになるのだろうか。オーストラリアの金融グループ・マッコーリーセキュリティーズグループの中華圏チーフエコノミストの胡偉俊氏は、「ここ数年、中国の債務は急速に増加し、企業の債務は大きな問題をはらんでいるが、短期的には債務危機が発生する可能性は低い」と予想する。
このほど発表された第1四半期(1-3月)の工業データをみると、中国経済はモデル転換・バージョンアップの傾向が明らかだ。ハイテク産業の付加価値は前年同期比9.2%増加し、工業全体の伸びを3.4ポイント上回った。電子産業の付加価値は同8.6%増加し、軽工業の利益は同13.3%増加し、繊維産業の利益は同6.4%増加した。有色金属産業、石油化学産業は川下の産業に引っ張られて、付加価値が9.4%と7.9%、それぞれ増加した。インターネットなど経済の新局面が加速的に発展し、電気通信事業の総量は45%増加し、モバイルデータの総消費量も前年同期の2.3倍に増えた。
国際通貨基金(IMF)の李昌鏞(イ・チャンヨン)アジア太平洋担当局長は、「中国経済が10%の成長率を永遠に維持することは不可能だ。一国の経済規模と資産水準が上昇を続けるのにともない、経済成長ペースは鈍化し、『収束効果』が現れるのが当たり前だ。中国経済の成長率は2020年には6%前後になるだろうが、他国と比べればまだ相当高い成長率であり、世界の中で引き続きトップクラスだ。中国経済の成長率は鈍化が予想されるが、これは経済がより持続可能な状態に向かうことの当然の結果だ」と話す。
▽狭い視野では利益を得られない
百歩譲って西側の基準を機械的に当てはめたとしても、「中国の不良債権問題」は実際にはそれほど大きな問題ではない。データをみると、15年末現在、中国の債務規模の対GDP比は249%、政府債務は44%で、全体としてコントロール可能な状態にある。
中国社会科学院世界経済・政治研究所の肖煉研究員は、「2000年から2015年にかけて、世界経済は債務を土台として発展してきた。債務は基本的にGDPの3倍以上になり、一部の先進国では3.8倍にもなる。これと比べれば、中国の対外債務は世界で最も少ない部類に入る。また中国のGDP成長率は今でも世界2位をキープし、購買力は世界一だ。これはつまり、中国がもつ問題解決の手段は他国よりも多いということだ」と話す。
ウォッチャーは、「モデル転換・バージョンアップが進行中の中国経済は確かに一連の『痛み』を抱えているが、『好材料』もたくさんあり、ますます増えているといえる。『古い部分』だけを見て『新しい部分』を見ず、『表面』だけを見て『内側』を見ずにいて、中国経済に『定義を下し』たり『ラベルを張っ』たりすれば、それは中国の国情と発展の流れに対する基本的な理解を欠くものと言え、『井戸の中から天井を見上げるような狭い視野』で中国をおとしめ、それによって市場から何らかの利益を得ようという態度にほかならない。しかし、現在の中国経済の規模や勢いや開放レベルを考えれば、一面的な視点はいかなる市場でも主流になることが難しく、これに乗じて思いもよらない利益を得ることなど言うべくもない」と指摘する。
(人民網日本語版)
関連記事: