中国の有名な日本文学翻訳家の唐月梅教授は、「日本人の生きる世界は非常に狭く、大陸国家にあるような壮大で峻厳な自然景観がほとんどない。小規模な景観に触れるだけで、穏やかな自然環境の中にある。こうして日本人の繊細な感覚と感情が養われた」と指摘したことがある。しかし明治時代の教育家である内村鑑三は、「(日本の)人々は猫の額ほどの国土で暮らし、些末事に夢中になっている」と見た。これは「日本人の天下は極東に連なる諸島だけだ」からだというのだ。
確かに、日本の国土面積は中国の約30分の1の37万8000平方キロメートル余りだ。しかも農業と居住に適した土地はその5分の1未満で、山が多い。ところが日本では1億人以上が暮らしているのだ。この混雑感は、今の台湾と海南省の人口を4−5倍にしなければ味わえないだろう。筆者は東京に行くたびに、空間の圧迫感を味わう。上海の人口を3倍にしたらどうなるだろうか。
日本は小さな国の条件しか持たないが(日本の国土面積は世界62位、人口は11位)、世界2位の経済体になった過去がある。現在も世界経済・技術をリードし、先頭集団に加わる能力を維持している。中国人は日本人を敬う余裕を持つべきであり、歴史を直視しない日本を憎み続けることで、「ライバル」の強みを見抜く目を曇らせるべきではない。
技術革新や社会文明の他に、日本には少なくとも二つの特長がある。中国はその研究に力を入れるべきだが、重視されることは稀だ。
まずは「一党優位」と呼ばれる日本の政治体制の秘密だ。中国人はこれをまだ正確に認識していない。第二次大戦後、自民党による単独・連立政権は半世紀以上も維持された。これは近現代の世界各国の政治では、歴史的な出来事と言えるだろう。
この長期政権の裏には、悪評高き政官財という「鉄のトライアングル」、金権政治、派閥争いなどがある。しかし中国人は、日本がこの特殊な体制により世界の資源を獲得し、力強い国政運営能力を手にしたことを認めなければならない。日本人はなぜ精巧で柔軟性の高いモノをデザインできるのか、日本はなぜ後発の資本主義国として急台頭・成長し、戦後に第二の民族復興を実現できたのだろうか?これは大きな政治的理論の問題だ。
次に、日本人の「保守主義・権威主義」という心理は、中国社会にとって理解に苦しむものだ。日本人は明らかな秩序意識、集団意識を持つ。一般的な日本人は権威を尊重し、この大衆心理によって均質的な社会構造を形成した。日本は1970年代、中流家庭が90%に達したとした。これがいわゆる「一億総中流」だ。この比率は当然ながら、20年後には40%に低下した。『下流社会』という日本のベストセラー本は、日本の衰退について論述している。しかし日本の過去の民権主義的な経済政策と社会の発展は、避けては通れない問題である。(筆者・王文 中国人民大学重陽金融研究院執行院長)
(チャイナネット)
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