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「田園回帰」:地方の発展は日本の新たなチャンスとなるか
jp.xinhuanet.com | 発表時間 2015-08-24 07:45:28 | チャイナネット | 編集: 吴寒冰

 少子高齢化に伴い、都会から離れた日本の多くの地方は人口が減少し、財政破綻の危機に瀕している。日本政府はこれに対して様々な措置を取り、若者の「田園回帰」を促し、「地方消滅」の傾向に歯止めをかけようとしている。学者は、集約型都市の建設を一方的に進めることは田舎からの人口流出を激化するだけだと注意を呼びかけている。日本の地方の発展にチャンスをもたらすには一体いかなる新たなモデルがあるのだろうか。

「ふるさと納税」で都市と農村の格差を縮小

 66歳の竹中貢町長は、ピンク色の熱気球の図柄の入った黒いTシャツを着て、少し照れくさそうに記者に聞いた。「似合うかな」。記者が似合うとほめると、町長は、東京と大阪に「ふるさと納税」を売り込みに行くためにデザインしてもらった服なのだと説明してくれた。

 竹中貢氏は、北海道中部に位置する上士幌町の町長だ。700平方キロメートルの町内には5080人の住民が暮らし、農業と牧畜、観光業が主要な財源となっている。

 少子高齢化に伴い、日本では、都会から離れた地方の人口が減り、財政収入も減少しており、一部の地方は財政破綻の危機に瀕している。都市と農村の格差を減らすため、日本政府は2008年、「ふるさと納税」という制度を打ち出し、大都市で働く住民が地方政府に対して自発的に寄付をすることを奨励し始めた。「ふるさと納税」を納める先は、自分の出身地に限られているわけではない。

 「ふるさと納税」の寄付者は寄付後、寄付を受けた地方自治体の発行した寄付証明書を受け取る。寄付者はこの証明書を持って、居住地の自治体の税務部門で住民税の控除を受けるか、給与から源泉徴収されている個人所得税の還付を受けることができる。寄付者は、2000円を自己負担するほかは、寄付金の残りすべてを控除対象とすることができる。寄付者は寄付の使用目的を指定することもできるし、寄付を受けた地方が自ら使い方を決めることもできる。寄付を受けた地方は、寄付金の額に応じて、寄付者に現地の特産品を贈呈するなどの奨励策を取っている。

 「ふるさと納税」は実質上、納税者が選べる財政移転制度であると同時に、地方が競争を通じて資源を獲得することを奨励する政策でもある。日本総務省の統計によると、同制度の実施から7年で、延べ108万人が地方に1126億円を寄付した。

 竹中町長によると、上士幌町の2014年の財政収入は、町税収入が6億2千万円で、その他の収入が5億8千万円となっている。政府から自治体への財政移転も27億円あるが、支出は61億3千万円にのぼり、財政状況は非常に厳しい。だが「ふるさと納税」制度を利用して、観光と特産品の売り込みを行い、2014年は9億7400万円の寄付を集めた。現地の主要財源である町税の1.5倍を超える額である。

解決しがたい「地方消滅」危機

 寄付金は財政難を救えるかもしれないが、人口流出の問題を解決することはできない。1960年代以来、日本の農村と地方の若者は大量に、東京や大阪、名古屋などの大都市へと仕事を探しに出かけていった。元総務大臣の増田寛也氏が率いる民間団体「日本創成会議」が2014年に発表した報告書によると、日本の半数近くの地方は2040年までに、若い女性(20-39歳)の人口が半減し、「地方消滅」の危機に直面することとなる。

 上士幌町も危機に直面している地方の一つだ。日本国立社会保障・人口問題研究所の推算によると、上士幌町の人口は2040年までに現在の約5000人から3222人に減る見込みだ。

 人口が東京に過度に集中している状況を改善するため、日本政府は昨年末、地方創生のための総合戦略を制定し、今後5年で地方に若者向けの雇用を30万口創出する計画を打ち出した。明治大学農学部の小田切徳美教授によると、地方や農村への移住を妨げる原因には、仕事の選択の余地が小さいことや地域が閉鎖的であることなどもあるが、最大の問題は、子どもが将来的に都市の大学に進学するための費用をいかに負担するかということにある。この問題の解決には、政府が一定の政策支援を与える必要がある。

 明治大学と毎日新聞による共同調査によると、農村への移住者は2013年、全国で8181人に達したが、これは2009年から2012年までの居住者の総数の2.9倍に達する。これは控え目に見積もった数字で、実際の人数はこれよりも多いと考えられる。

 調査によると、若者が農村への移住を希望するのは、都市で仕事が見つからないのが原因ではない。その目的としては、地方振興に貢献したい、田園生活が好きである、自らの能力を発揮したいなど様々なものが挙げられる。若者は現在、「半農半X」という新たな生活方式を形成しつつある。農業生産をしながら、半分の時間をほかの仕事や趣味のために使おうという暮らし方である。

「スローライフ」が農村の魅力

 日本内閣府は2009年、農村に移住して働くことを希望する志願者に対して3年間の固定給を保証するという実験的なプロジェクトを打ち出した。このプロジェクトの申請者は1500人に達し、そのうち8割が20歳から30歳の若者だった。3年後、半分以上の参加者が農村への定住を選択している。

 今年37歳の西尾康宏氏は、株式会社ノベルズの取締役である。9年前、同級生とともに、育種と飼育、食肉・乳製品の生産と加工を一体化した近代的牧場を創設した。牧場で飼育されている牛は1万6500頭に達し、日本の牧場の平均飼養頭数の300倍に及んでいる。195人の従業員の平均年齢は29歳にすぎない。牧場は今年、10人の大卒者と2人の高卒者を雇用した。

 西尾氏によると、ここで働く若者の多くは、他地方出身の農学専門の卒業生で、夢の実現のために牧場にやってきた。彼らが安心して働けるよう、牧場には宿舎と食堂も用意されている。従業員の収入は東京の同年齢層の70%程度だが、物価も東京の70%だ。

 竹中町長によると、上士幌町は「ふるさと納税」の収入を主に、教育や医療などの公共施設の建設に当てている。さらに外国人教師の雇用や、中学校の楽団のための楽器購入、保育費用の減免などの措置にも役立て、町民が安心して育児ができる環境を整えている。

 竹中町長によると、24時間とどまることのない東京のような国際都市と比べ、農村の魅力は「スローライフ」や人と人との間の親密な関係にある。大都市での「ふるさと納税」のプロモーションでは、寄付を募るだけでなく、寄付者との間の感情的な交流も強めていく計画だ。上士幌町を訪れる人が増えれば、ここに定住したいと思う人も出てくるはずだと見込んでいる。

 

(チャイナネット)

 

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新華網日本語

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新華網日本語 2015-08-24 07:45:28

 少子高齢化に伴い、都会から離れた日本の多くの地方は人口が減少し、財政破綻の危機に瀕している。日本政府はこれに対して様々な措置を取り、若者の「田園回帰」を促し、「地方消滅」の傾向に歯止めをかけようとしている。学者は、集約型都市の建設を一方的に進めることは田舎からの人口流出を激化するだけだと注意を呼びかけている。日本の地方の発展にチャンスをもたらすには一体いかなる新たなモデルがあるのだろうか。

「ふるさと納税」で都市と農村の格差を縮小

 66歳の竹中貢町長は、ピンク色の熱気球の図柄の入った黒いTシャツを着て、少し照れくさそうに記者に聞いた。「似合うかな」。記者が似合うとほめると、町長は、東京と大阪に「ふるさと納税」を売り込みに行くためにデザインしてもらった服なのだと説明してくれた。

 竹中貢氏は、北海道中部に位置する上士幌町の町長だ。700平方キロメートルの町内には5080人の住民が暮らし、農業と牧畜、観光業が主要な財源となっている。

 少子高齢化に伴い、日本では、都会から離れた地方の人口が減り、財政収入も減少しており、一部の地方は財政破綻の危機に瀕している。都市と農村の格差を減らすため、日本政府は2008年、「ふるさと納税」という制度を打ち出し、大都市で働く住民が地方政府に対して自発的に寄付をすることを奨励し始めた。「ふるさと納税」を納める先は、自分の出身地に限られているわけではない。

 「ふるさと納税」の寄付者は寄付後、寄付を受けた地方自治体の発行した寄付証明書を受け取る。寄付者はこの証明書を持って、居住地の自治体の税務部門で住民税の控除を受けるか、給与から源泉徴収されている個人所得税の還付を受けることができる。寄付者は、2000円を自己負担するほかは、寄付金の残りすべてを控除対象とすることができる。寄付者は寄付の使用目的を指定することもできるし、寄付を受けた地方が自ら使い方を決めることもできる。寄付を受けた地方は、寄付金の額に応じて、寄付者に現地の特産品を贈呈するなどの奨励策を取っている。

 「ふるさと納税」は実質上、納税者が選べる財政移転制度であると同時に、地方が競争を通じて資源を獲得することを奨励する政策でもある。日本総務省の統計によると、同制度の実施から7年で、延べ108万人が地方に1126億円を寄付した。

 竹中町長によると、上士幌町の2014年の財政収入は、町税収入が6億2千万円で、その他の収入が5億8千万円となっている。政府から自治体への財政移転も27億円あるが、支出は61億3千万円にのぼり、財政状況は非常に厳しい。だが「ふるさと納税」制度を利用して、観光と特産品の売り込みを行い、2014年は9億7400万円の寄付を集めた。現地の主要財源である町税の1.5倍を超える額である。

解決しがたい「地方消滅」危機

 寄付金は財政難を救えるかもしれないが、人口流出の問題を解決することはできない。1960年代以来、日本の農村と地方の若者は大量に、東京や大阪、名古屋などの大都市へと仕事を探しに出かけていった。元総務大臣の増田寛也氏が率いる民間団体「日本創成会議」が2014年に発表した報告書によると、日本の半数近くの地方は2040年までに、若い女性(20-39歳)の人口が半減し、「地方消滅」の危機に直面することとなる。

 上士幌町も危機に直面している地方の一つだ。日本国立社会保障・人口問題研究所の推算によると、上士幌町の人口は2040年までに現在の約5000人から3222人に減る見込みだ。

 人口が東京に過度に集中している状況を改善するため、日本政府は昨年末、地方創生のための総合戦略を制定し、今後5年で地方に若者向けの雇用を30万口創出する計画を打ち出した。明治大学農学部の小田切徳美教授によると、地方や農村への移住を妨げる原因には、仕事の選択の余地が小さいことや地域が閉鎖的であることなどもあるが、最大の問題は、子どもが将来的に都市の大学に進学するための費用をいかに負担するかということにある。この問題の解決には、政府が一定の政策支援を与える必要がある。

 明治大学と毎日新聞による共同調査によると、農村への移住者は2013年、全国で8181人に達したが、これは2009年から2012年までの居住者の総数の2.9倍に達する。これは控え目に見積もった数字で、実際の人数はこれよりも多いと考えられる。

 調査によると、若者が農村への移住を希望するのは、都市で仕事が見つからないのが原因ではない。その目的としては、地方振興に貢献したい、田園生活が好きである、自らの能力を発揮したいなど様々なものが挙げられる。若者は現在、「半農半X」という新たな生活方式を形成しつつある。農業生産をしながら、半分の時間をほかの仕事や趣味のために使おうという暮らし方である。

「スローライフ」が農村の魅力

 日本内閣府は2009年、農村に移住して働くことを希望する志願者に対して3年間の固定給を保証するという実験的なプロジェクトを打ち出した。このプロジェクトの申請者は1500人に達し、そのうち8割が20歳から30歳の若者だった。3年後、半分以上の参加者が農村への定住を選択している。

 今年37歳の西尾康宏氏は、株式会社ノベルズの取締役である。9年前、同級生とともに、育種と飼育、食肉・乳製品の生産と加工を一体化した近代的牧場を創設した。牧場で飼育されている牛は1万6500頭に達し、日本の牧場の平均飼養頭数の300倍に及んでいる。195人の従業員の平均年齢は29歳にすぎない。牧場は今年、10人の大卒者と2人の高卒者を雇用した。

 西尾氏によると、ここで働く若者の多くは、他地方出身の農学専門の卒業生で、夢の実現のために牧場にやってきた。彼らが安心して働けるよう、牧場には宿舎と食堂も用意されている。従業員の収入は東京の同年齢層の70%程度だが、物価も東京の70%だ。

 竹中町長によると、上士幌町は「ふるさと納税」の収入を主に、教育や医療などの公共施設の建設に当てている。さらに外国人教師の雇用や、中学校の楽団のための楽器購入、保育費用の減免などの措置にも役立て、町民が安心して育児ができる環境を整えている。

 竹中町長によると、24時間とどまることのない東京のような国際都市と比べ、農村の魅力は「スローライフ」や人と人との間の親密な関係にある。大都市での「ふるさと納税」のプロモーションでは、寄付を募るだけでなく、寄付者との間の感情的な交流も強めていく計画だ。上士幌町を訪れる人が増えれば、ここに定住したいと思う人も出てくるはずだと見込んでいる。

 

(チャイナネット)

 

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