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手探りで進む日本のシェアリングエコノミー
jp.xinhuanet.com | 発表時間 2018-07-24 13:21:38 | 新華社 | 編集: 张一

  【新華社東京7月24日】日本の若者のマイカー所有への関心は低下傾向にあり、買い物や子どもの送迎あるいは引っ越しなど、日常の短時間だけ車が必要な場面では、カーシェアリングが流行しつつある。

  警察庁と総務省の統計データによると、29歳以下の若者のうち80%以上が運転免許証を保有しているが、同年齢層のマイカー所有率はここ数年一貫して50%前後で推移し、10数年前に比べ約10%低下した。

  急速に発展するカーシェアリングがマイカー所有に取って代わっている。車を使いたい時は、予約サイトか専用のスマートフォンアプリで車の引取場所と利用時間帯、車種を選択し、予約した時間に合わせて駐車場所へ向かい、会員カードを車の読み取り部分にかざせば解錠できる。

  トヨタグループのカーシェアリングサービスを担当する社内カンパニー「コネクティッドカンパニー」のMaaS事業部Ha:mo事業室の早田敏也企画グループ長は、カーシェアリングはレンタカーより短時間の利用が可能で、借りる際も返却時も店舗に行って手続きをする必要がない上、アプリやパソコンで予約し、カードで認証、自動支払いができ、非常に便利だと説明する。

  日本最大の駐車場管理業者パーク24は、2009年からカーシェアリングサービスを開始した。同社経営企画本部グループ企画部の小田原真琴課長は、若者は経済的にマイカー購入がやや困難なため、その多くが運転免許証取得後、まずはカーシェアで需要を満たしていると述べた。またかなりの人が、旅先や出張先で新幹線や飛行機を降りた後、カーシェアリングを利用するという。

  小田原氏は、ここ数年のスマートフォン(スマホ)普及がカーシェアリングの発展を大きく後押ししたと述べた。予約が手軽になったことでカーシェアリングの利便性も向上し、利用者が増え続けた。パーク24のステーション(拠点)は2009年10月末で、わずか136カ所、車両数は256台、会員は2425人だった。2017年10月末には拠点数が1万カ所を超え、車両数は2万台以上、会員は90万人を超えた。

  カーシェアリングだけでなく、自転車シェアやボートシェアなど、日本のシェアリングエコノミーは今まさに勃興期を迎えている。中国の自転車シェアサービス大手ofo(オフォ)は2017年7月、日本市場に進出した。現在は和歌山県和歌山市、福岡県北九州市と滋賀県大津市で事業を展開している。OFO JAPAN日本市場統括の日吉良昭氏は、シェア自転車で自宅と駅、会社と駅を往復するほか、公共交通機関を降りてから自転車で観光名所を巡るなど、シェア自転車は「最後の1キロ」を補う道具として、多くの消費者に受け入れられ始めていると話す。

  ヤマハ発動機は、国内ボート市場で約60%のシェアを占める日本最大のボート製造企業だ。同社マリン事業本部の南成記氏によると、2006年設立の「ヤマハマリンクラブ・シースタイル」は、会員に日本全国約140カ所、海外2カ所に広がる同社のマリーナ(係留拠点)でボートを借りられるサービスを提供している。ボート購入はもともと富裕層だけの特権だったが、シースタイルはボート利用のハードルを大幅に下げ、会員数は12年連続で増加、2017年には2万2千人に達した。

  シースタイルの設立を準備していた頃、同社内部ではシェアサービスはボートの売れ行きに影響すると、設立に反対する声も上がった。だが実際にはボート、水上バイクなどを含め、同社のマリン事業の業績は好調で、2017年の売上高は前年比9%増の3238億円に達し、売上高に占める営業利益の割合は18・4%と高水準だった。

  総務省の2017年版「情報通信白書」によると、日本のシェアリングエコノミーの国内市場規模は2015年度に285億円だったものが、2020年までに600億円に達すると見込まれている。

  シェアリングエコノミーへの注目が高まる今、各分野では常にシェアサービスを提供する新興企業が華々しく登場している。ただ日本におけるシェアリングエコノミーの発展には、まだ解決すべき課題が立ちはだかっており、関連部門が懸命に対策を講じている。

  第一の課題はサービス提供者と利用者双方の安全確保だ。同省の調査によると「シェアリングエコノミーのデメリット・利用したくない理由」として第一に挙がるのがトラブル発生の可能性とその対応への不安だという。シェアリングエコノミーのサービス提供者は往々にして企業ではなく個人で、利用者はサービス提供者の身元や背景が全くわからない。また、住宅や車両の提供者も質の悪い利用者に当たることを恐れている。日本では主に第三者機関の介入を通じてこうしたトラブルを防いでいる。一つには双方に実名認証を求め、二つには第三者機関を経由した決済方法で、利用者の不払いやサービス提供者が代金だけ受け取りサービスを提供しないなどのトラブルを防止する。このほか日本政府は関連する法律・法規を常に整備している。例えば、民泊に対する「住宅宿泊事業法」が今年6月に施行された。同法では、民泊事業を行うには事前に都道府県知事か保健所設置市などの長への届け出を必要とし、年間提供日数は180日(泊)を限度とすることなどが定められている。

  こうした予防措置のほか、日本では保険と補償制度の整備も進められている。第三者機関や民間保険会社は現在、制度について試行を重ねている。

  第二の課題はいわゆる「情報格差(デジタルデバイド)」。シェアリングエコノミーにはパソコンやスマホと簡単にインターネットに接続できる環境が欠かせない。同省のデータによると、日本の13~49歳の年齢層のインターネット利用率は90%を超えるが、65歳以上では60%に満たない。70~80歳の利用率はさらに低い。また、家庭の年収が低いほどインターネット利用率も低下する。日本政府はシェアリングエコノミーが低所得者にとって副業収入を得る手段になり、また日常的に介護を必要とする高齢者にとってはより低価格でサービスを受けられる助けになるとみている。このため日本政府はインターネットをインフラとみなし、街中や商業施設、公共施設への無料Wi−Fiスポットの普及を推進するとともに、高齢者等の層に向けたシェアリングエコノミーの啓発教育推進にも参画している。

  第三の課題はシェアリングエコノミーと従来型サービス提供者の対立。Uber(ウーバー)は日本国内のタクシー業界からの抵抗に遭い、これまでネットを使った配車予約のシステムを運営できずにいた。数年にわたる交渉の末、辛うじて一部の都市で運営が可能になったものの、車両数はごくわずか。日本のUberは今もなお「タクシー配車アプリ」にとどまっている。

  シェアに対する消費者の抵抗感と日本社会の規制もシェアリングエコノミー発展を妨げる要因となっている。前出のOFO JAPANの日吉氏は、シェア自転車も民泊も、サービスの提供者と利用者が共にまだ「保有」する文化から「共有」する文化への転換に慣れていない点で同じだと述べ、日本人の認識がまだ追いついておらず、(シェアリングエコノミーの発展には)時間が必要だとの見方を示した。

  また、日本は自動車の路上駐車の取り締まりが厳しく、自転車でさえ決められた駐輪場に停めなければならない。駐車場や駐輪場が不足していれば目的地へ着いても停める場所がなく、次回カーシェアやシェア自転車を利用しようという利用者の意欲をそぎかねない。(記者/銭錚)

 

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  【新華社東京7月24日】日本の若者のマイカー所有への関心は低下傾向にあり、買い物や子どもの送迎あるいは引っ越しなど、日常の短時間だけ車が必要な場面では、カーシェアリングが流行しつつある。

  警察庁と総務省の統計データによると、29歳以下の若者のうち80%以上が運転免許証を保有しているが、同年齢層のマイカー所有率はここ数年一貫して50%前後で推移し、10数年前に比べ約10%低下した。

  急速に発展するカーシェアリングがマイカー所有に取って代わっている。車を使いたい時は、予約サイトか専用のスマートフォンアプリで車の引取場所と利用時間帯、車種を選択し、予約した時間に合わせて駐車場所へ向かい、会員カードを車の読み取り部分にかざせば解錠できる。

  トヨタグループのカーシェアリングサービスを担当する社内カンパニー「コネクティッドカンパニー」のMaaS事業部Ha:mo事業室の早田敏也企画グループ長は、カーシェアリングはレンタカーより短時間の利用が可能で、借りる際も返却時も店舗に行って手続きをする必要がない上、アプリやパソコンで予約し、カードで認証、自動支払いができ、非常に便利だと説明する。

  日本最大の駐車場管理業者パーク24は、2009年からカーシェアリングサービスを開始した。同社経営企画本部グループ企画部の小田原真琴課長は、若者は経済的にマイカー購入がやや困難なため、その多くが運転免許証取得後、まずはカーシェアで需要を満たしていると述べた。またかなりの人が、旅先や出張先で新幹線や飛行機を降りた後、カーシェアリングを利用するという。

  小田原氏は、ここ数年のスマートフォン(スマホ)普及がカーシェアリングの発展を大きく後押ししたと述べた。予約が手軽になったことでカーシェアリングの利便性も向上し、利用者が増え続けた。パーク24のステーション(拠点)は2009年10月末で、わずか136カ所、車両数は256台、会員は2425人だった。2017年10月末には拠点数が1万カ所を超え、車両数は2万台以上、会員は90万人を超えた。

  カーシェアリングだけでなく、自転車シェアやボートシェアなど、日本のシェアリングエコノミーは今まさに勃興期を迎えている。中国の自転車シェアサービス大手ofo(オフォ)は2017年7月、日本市場に進出した。現在は和歌山県和歌山市、福岡県北九州市と滋賀県大津市で事業を展開している。OFO JAPAN日本市場統括の日吉良昭氏は、シェア自転車で自宅と駅、会社と駅を往復するほか、公共交通機関を降りてから自転車で観光名所を巡るなど、シェア自転車は「最後の1キロ」を補う道具として、多くの消費者に受け入れられ始めていると話す。

  ヤマハ発動機は、国内ボート市場で約60%のシェアを占める日本最大のボート製造企業だ。同社マリン事業本部の南成記氏によると、2006年設立の「ヤマハマリンクラブ・シースタイル」は、会員に日本全国約140カ所、海外2カ所に広がる同社のマリーナ(係留拠点)でボートを借りられるサービスを提供している。ボート購入はもともと富裕層だけの特権だったが、シースタイルはボート利用のハードルを大幅に下げ、会員数は12年連続で増加、2017年には2万2千人に達した。

  シースタイルの設立を準備していた頃、同社内部ではシェアサービスはボートの売れ行きに影響すると、設立に反対する声も上がった。だが実際にはボート、水上バイクなどを含め、同社のマリン事業の業績は好調で、2017年の売上高は前年比9%増の3238億円に達し、売上高に占める営業利益の割合は18・4%と高水準だった。

  総務省の2017年版「情報通信白書」によると、日本のシェアリングエコノミーの国内市場規模は2015年度に285億円だったものが、2020年までに600億円に達すると見込まれている。

  シェアリングエコノミーへの注目が高まる今、各分野では常にシェアサービスを提供する新興企業が華々しく登場している。ただ日本におけるシェアリングエコノミーの発展には、まだ解決すべき課題が立ちはだかっており、関連部門が懸命に対策を講じている。

  第一の課題はサービス提供者と利用者双方の安全確保だ。同省の調査によると「シェアリングエコノミーのデメリット・利用したくない理由」として第一に挙がるのがトラブル発生の可能性とその対応への不安だという。シェアリングエコノミーのサービス提供者は往々にして企業ではなく個人で、利用者はサービス提供者の身元や背景が全くわからない。また、住宅や車両の提供者も質の悪い利用者に当たることを恐れている。日本では主に第三者機関の介入を通じてこうしたトラブルを防いでいる。一つには双方に実名認証を求め、二つには第三者機関を経由した決済方法で、利用者の不払いやサービス提供者が代金だけ受け取りサービスを提供しないなどのトラブルを防止する。このほか日本政府は関連する法律・法規を常に整備している。例えば、民泊に対する「住宅宿泊事業法」が今年6月に施行された。同法では、民泊事業を行うには事前に都道府県知事か保健所設置市などの長への届け出を必要とし、年間提供日数は180日(泊)を限度とすることなどが定められている。

  こうした予防措置のほか、日本では保険と補償制度の整備も進められている。第三者機関や民間保険会社は現在、制度について試行を重ねている。

  第二の課題はいわゆる「情報格差(デジタルデバイド)」。シェアリングエコノミーにはパソコンやスマホと簡単にインターネットに接続できる環境が欠かせない。同省のデータによると、日本の13~49歳の年齢層のインターネット利用率は90%を超えるが、65歳以上では60%に満たない。70~80歳の利用率はさらに低い。また、家庭の年収が低いほどインターネット利用率も低下する。日本政府はシェアリングエコノミーが低所得者にとって副業収入を得る手段になり、また日常的に介護を必要とする高齢者にとってはより低価格でサービスを受けられる助けになるとみている。このため日本政府はインターネットをインフラとみなし、街中や商業施設、公共施設への無料Wi−Fiスポットの普及を推進するとともに、高齢者等の層に向けたシェアリングエコノミーの啓発教育推進にも参画している。

  第三の課題はシェアリングエコノミーと従来型サービス提供者の対立。Uber(ウーバー)は日本国内のタクシー業界からの抵抗に遭い、これまでネットを使った配車予約のシステムを運営できずにいた。数年にわたる交渉の末、辛うじて一部の都市で運営が可能になったものの、車両数はごくわずか。日本のUberは今もなお「タクシー配車アプリ」にとどまっている。

  シェアに対する消費者の抵抗感と日本社会の規制もシェアリングエコノミー発展を妨げる要因となっている。前出のOFO JAPANの日吉氏は、シェア自転車も民泊も、サービスの提供者と利用者が共にまだ「保有」する文化から「共有」する文化への転換に慣れていない点で同じだと述べ、日本人の認識がまだ追いついておらず、(シェアリングエコノミーの発展には)時間が必要だとの見方を示した。

  また、日本は自動車の路上駐車の取り締まりが厳しく、自転車でさえ決められた駐輪場に停めなければならない。駐車場や駐輪場が不足していれば目的地へ着いても停める場所がなく、次回カーシェアやシェア自転車を利用しようという利用者の意欲をそぎかねない。(記者/銭錚)

 

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