韓国の内政の混乱が続くなか、外交の問題が生じた。これはTHAAD導入による中韓の対立ではなく、慰安婦がもたらした日韓の齟齬だ。
朴槿恵政権は2015年末、日本と慌ただしく慰安婦問題で合意に達した。当時の朴政権は米国の仲介により、日韓両国の和解を実現した。日本側は10億円のみを拠出し、小銭で歴史の残された問題を解決したと言える。しかしこの合意に、韓国の国民は不満を抱き続けている。朴政権の「崔順実ゲート事件」発覚後、韓国の政治は内乱に陥った。韓国政府も合意に基づき、韓国の日本大使館前に設置された慰安婦像を撤去しなかった。
そればかりではない。昨年の最後の日、韓国人は釜山の日本総領事館前に、新たな慰安婦像を設置した。これは日本の不興を買った。日本政府は6日、韓国への対抗措置を発表した。在釜山日本総領事を一時帰国させ、さらに日韓スワップの取り決め協議を中断し、かつ日韓ハイレベル経済協議を延期した。また釜山の日本総領事館の職員も、釜山でのすべての二国間外交活動を一時停止する。
日本の対抗は理にかなっているように見える。日韓が金で慰安婦問題を解決することで合意し、かつすでに10億円を拠出している以上、韓国側は合意事項を履行し、韓国の日本大使館前の慰安婦像を撤去しなければならない。韓国側は撤去しなかったばかりか、釜山の日本総領事館前に新たに慰安婦像を設置した。
しかし韓国人からすれば、慰安婦問題は10億円の拠出で解決できるはずがない。日本が誠意ある謝罪をしなければ、慰安婦問題は解決できない歴史の懸案のままだ。ましてや合意した朴大統領が弾劾されており、韓国の政権が渦中に陥っているのだからなおさらだ。朴大統領に反対し繰り返される韓国の街頭活動が1000万人以上を動員しており、韓国人が慰安婦問題の合意など認められようか。
そのため韓国人が釜山に慰安婦像を設置したのは、朴政権への不満でもあり、日本政府への怒りの発散でもある。韓国人はさらに実際の行動により、慰安婦問題が10億円で解決できるものではないことを証明してみせた。これは韓国の歴史に対する原則的な立場だ。
メディアは本件について、日本政府が韓国の一枚板の民意に直面していると論じている。確かに北東アジアにおいて、日韓が現実的にどのような関係を結ぼうと、日本が間違った歴史観を持てば、日韓両国は未来を見据えることができない。日韓関係のみならず、中日関係もそうだ。
当然ながら、日本が韓国に対して強い外交活動を展開することには、多くの現実的な理由がある。
まず朴政権が苦境に立たされており、大統領選がすでに議事日程にあがっている。野党の支持率が高まっており、文在寅氏もしくは李在民氏が青瓦台に入居すれば、米日との外交に変化が生じるだろう。日韓両国がオバマ時代のアジア太平洋リバランスに合わせ形成した合意事項は、失効になる可能性がある。特に慰安婦をめぐる合意は、国民から反発を受けており、新政権がこれに逆らい日本に迎合することはない。さらに重要なことに、日本の侵略の歴史の揺るぎなき証拠である慰安婦問題は、歴史の正義に関するのみならず、日韓間の現実的な駆け引きと関連している。これは国際関係のパラドックスだ。韓国政府は慰安婦を、日本をけん制し、民意をなだめる武器にすることができ、また韓国が必要な時であれば日本を不利な与論にさらすことができる。そのため日本は不可逆的な慰安婦問題の解決を願っている。これは韓国の民意に著しく背く。安倍政権は韓国の政局の変化に焦りを覚え、さらには現実的な脅威を感じ、韓国の政権を厳しく批判する外交の動きに出た。
次に、朴政権は苦境に立たされている。トランプ時代の米日関係は先行き不透明で、安倍首相の対露外交も予想されていた効果を手にしなかった。中日関係は依然として低迷している。安倍首相が日韓関係さえコントロールできなければ、オバマ時代の順風満帆な外交関係にもピリオドを打たれる。長命首相になるため、安倍首相は外交面で行動に出なければならない。韓国の慰安婦問題の態度により、安倍首相は韓国に手を加えた。
それから、韓国政府が危機を迎えており、朴時代の内政 外交が覆される可能性が出ている。THAADの韓国配備が政界と民間で物議を醸しているとするならば、慰安婦の合意については、韓国人はそろって反朴 反日だ。そのため米国で開かれた米日韓次官協議で、日本の外務事務次官と韓国の外交部第一次官が、真っ向から口論する一幕が演じられた。日本側は、韓国が両国の慰安婦合意に違反していると批判し、韓国側は、稲田朋美防衛相が靖国神社を参拝したことを批判した。
さらに重要なことは、トランプ時代の米日韓同盟関係の先行きが不透明であることだ。米国という仲介者がなければ、韓国の対日外交は戦略的安定性を失う。ポスト朴時代に、日本の韓国への外交の対抗は、韓国内での反日ムードを強めるばかりで、かつ各政治勢力に利用されるだろう。
そこで安倍政権の韓国への外交活動、特に慰安婦を名義とするものは、韓国に警鐘を鳴らす目的を達成しがたく、むしろより大きな副作用を生むことだろう。日韓関係はますます悪化 混乱する。中央日報(電子版)が「日本の超強硬対策は、韓日関係の悪化を懸念していた韓国外交当局を悩ませている。双方の外交戦は、すでに火花を散らしている」と論じたとおりだ。これは安倍首相にとって、決して朗報ではない。(筆者:張敬偉 察哈爾学会高級研究員、中国人民大学重陽金融研究院客員研究員)
(チャイナネット)
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