松野理事は、「日中の経済貿易関係の変化は単に世界と中国の経済情勢の変化が引き起こしたもので、日中関係などの政治的要因とはほぼ無関係だ」との見方を示した。
松野理事は、「中国が実施する『新常態』の経済政策は、経済の中速で安定した成長を示す数値を単純に追求するものではない」とした上で、「その目的には、内需主導型経済成長モデルへの転換が含まれ、産業構造の労働集約型から付加価値型への転換も必要だ」と述べた。
また松野理事は、「中国政府の政策には明らかに変化が起きている。この変化は中国で貿易に従事する外資系企業にとって、重大な折り返し地点になる」と述べた。
松野理事の指摘によると、「日本企業にとって、中国の経済構造や産業構造のモデル転換ニーズに対応した事業には、好調な発展の見通しがある。これまでの環境保護や省エネ 汚染物質排出削減などに、内需の拡大、サービス産業の発展、中国企業のグローバル化支援の3点が新たに加わり、日本企業の中国におけるビジネスチャンスはさらに多くなった」という。
また一方で、「こうしたビジネス分野と日本企業とでは中国に期待する内容が異なる。そこで中国に変化に合わせて、日本企業も業務戦略の調整をはかる必要がある。たとえば日本企業にとって、中国企業はかつては事業の重要な補完役だったが、これから世界規模で事業を展開する際には、中国企業を重要なパートナーとみなす必要がある」という。
松野理事は、「日本企業はこうした戦略調整をまだ十分に終えていない。その原因は、一つは日本企業がグローバル戦略を正確に制定していないことにあり、またもう一つの大きな原因として日本企業が中国での事業展開に不安をぬぐい去れないということがある」と率直に指摘した。