日本製品が最も称賛を呼ぶのは、その独特な「匠の心」である。記者はかつて、日本の多くのメーカーの工場を見学し、日本人労働者の真剣で丹念な「匠の精神」に感銘を受けた。
日本人は、技術や腕前の卓越した人を「匠」と呼んで尊重している。日本の「文化財保護法」は、手工芸技術を無形文化遺産として保護している。無形文化の伝承者は社会各界で尊敬され、とりわけ重要無形文化遺産の伝承者は「人間国宝」と呼ばれ、社会的に崇拝されている。
日本政府は、重要無形文化財を保護するため、「人間国宝」に毎年200万円の特別助成金が交付される。
だが「匠」の伝承が可能となるには、こうした措置だけでは足りない。日本の就学前教育と学校教育の体系においては、こうした「匠の意識」があらゆる機会に植え付けられ、技術を磨くことに対する興味が小さい頃から育てられている。
民間手工芸の一人前の職人となるには、長期の修行が必要となる。また民間手工芸品の製作は非常に繁瑣で、原料も安くないため、利潤は分厚いとは言えない。例えば貝殻や象牙の彫刻を表面にはめこんだ漆器は、使用する原料が非常に高価で、原料とコストを考えるとほとんど利潤はない。伝統手工芸に対する情熱と技術を伝承したいという願望だけで成り立っている。
記者はこのほど、伝統工芸の伝承に尽力する京都伝統工芸大学校を参観した。ここでは、伝統工芸を愛する多くの若者が懸命に学び、一定期間の学習を経て、陶器や木彫、銅彫などの優れた工芸品を作る技術を身に付けている。若者がここでの学習に耐えられるのは、ひとえに伝統工芸に対する愛からであり、匠の精神を受け継ごうという人はまだまだいるのだということがわかる。
日本の企業界のある人物は、日本製品が絶え間なく向上しているのは、市場の競争の激しさによるものだと指摘している。競争環境においては、品質によって勝ち抜いていくほかなく、さらに素晴らしい製品を作らざるを得ない。これにもまた、技術の熟達したブルーカラーの労働者の育成が必要となる。
日本では、肉体労働と頭脳労働の収入の差はそれほど大きくない。ブルーカラーの仕事も立派な仕事であり、ブルーカラー労働者の賃金水準は全世界でも高い水準にある。高級技術労働者の月給は、一家全員の支出を支えるに足りる。このような堅固な物質的土台を盾として、技術労働者は全身全霊で仕事に打ち込み、新たな技術と製品を絶えず開発している。
政府の主導する研究開発は、日本の技術革新のわずか20%を占めるに過ぎない。残りの80%の技術革新は事実上、企業によって行われている。民間企業は日本の科学技術の発展の主力である。そして「匠の精神」は、日本の科学技術の発展の源泉となっている。日本人は絶えず向上を意識し、完璧を追求する。一流の技術を持ったブルーカラーの労働者は、日本の製造業が強い重要な原因の一つである。
早稲田大学の鵜飼信一教授によると、日本の90%以上の企業は中小企業で、多くの従業員は、社員10人に満たない零細企業で働いている。だが日本の製造業の技術力はまさにこうした中小企業によって支えられている。彼らは、日本の製造業の最大の強みであり、日本経済の原動力と言える。
(チャイナネット)
関連記事: