劉氏によると、一般的に、国家経済にとっては、企業減税が正しい改革の方向であることは否定できない。また企業負担を減らし、企業の活力を高め、企業により大きな利益を生み出すことも評価できる。だがこのような減税措置が日本経済の振興という短期的な効果を生むかは定かではない。経済モデルの転換の成功を左右するのは、根本的には税制ではないからだ。
「海外と比較すると、日本の税率は実際にはそれほど高いとは言えない」と劉氏は指摘する。日本経済低迷の原因の核心は、社会全体のコストの増加にあり、人口の高齢化によってもたらされる企業の活力の低下にあり、近年の体制の硬直によって形成された企業の革新不足などの問題にある。減税は根本的な問題を解決できない。
固定資産の減税に、国内投資を引っ張る働きが一定程度あることは確かだが、これは効果を上げるのだろうか。
劉氏によると、より長期的に考えれば、日本企業による外国に対する投資の収益率は、日本国内に対する投資の収益率をはるかに上回ると見られる。日本の国内金利は長期にわたってゼロに据え置かれ、資本収益率もかなり低い。この状況の下では、国外の市場も国外の収益率も日本より有利ということになり、企業は当然、外国市場という「バスケット」の方により多くの資本を投じようとすることになる。そのため減税をしても、日本企業は、国内市場ではなく海外市場により多く投資をし続けるものと考えられる。
▽減税で誰が得するか
さらに注意すべきなのは、安倍首相があいまいにし続けている減税をめぐる最大の問題、財源の問題である。