日本では、高度成長が始まった1950年代ごろを境に、中国文化の影響を色濃く受けた社会伝統、風俗習慣、儀礼、家族観念などが大きく様変わりした。幾世代もが同居する日本の大家族は、核家族を代表とする小家族に変わり、家族や親戚との関係も急速に薄れた。ここ2〜30年で、日本社会の少子高齢化はますます深刻化し、もともと薄れかけていた人と人との繋がりがさらに薄まっている。
日本に住む中国人なら誰もが感じることだが、日本では人と人との関係が中国ほど密接ではなく、極めて淡白だ。
日本では年に2回贈り物をする習慣がある。8月のお中元と、12月のお歳暮だ。この時期になると、日本の百貨店やスーパー、さらにはコンビニなどに様々なギフトが並びだす。ギフトの内容は、タオルやバス・トイレタリー、食器などの日用品や、ビール・アルコール、フルーツ、お菓子、調味料、食用油、米といった食品が多い。価格は3千から6千円で、1万円を超える物は少ない。贈る相手は家族や親戚、同僚や友人だ。
中国人から見ると、これらは小さな贈り物に見えるが、お中元やお歳暮の贈り物は、値段が重要ではない。大事なのは、気持ちが伝わるかどうかだ。ゆえに、日本人は「ささやかな贈り物」に気持ちをこめる。わざわざ三越や高島屋などの百貨店に出かけて贈り物を購入する人も多い。包装紙に有名百貨店の名前やロゴが書かれていれば、相手を重視している感を出すことができるからだ。百貨店のギフトでは気持ちが伝わらないと考える人は、もっと個性的なギフトを選ぶ。例えば私は、瀬戸内海の小島で魚介類を肥料にして育てられたたみかん、北海道のご当地調味料などをいただいたことがある。
「君子の交わりは淡きこと水の如し」という言葉もあるが、こうした古風な人付き合いは、深い感情のやり取りにつながる。しかし近年、日本人の人間関係はますます希薄になっている。まず、SNSの普及により、頻繁に顔を合わせなくてもネット上でいつでも交流できるようになり、オフラインの活動も計画できるようになった。人と人の間のバーチャルな距離が近づき、お中元やお歳暮といった伝統的なやり方で人との関係を築いたり、強化する必要がないと考える人が増えた。
また、若者の「貧困化」も人と人の繋がりが薄まった原因のひとつだ。日本人の平均収入から見ると、こうした贈り物にかかる支出は大したことがないように思われるが、収入の低い若者にとってはやはり負担になる。このほか、日本の新築マンションなどでは、セキュリティ対策で居住階にしかエレベーターが止まらないようになっており、同じマンションに住んでいても、階の違う住民とは顔を合わせることもない。もともと人付き合いの苦手な人は、日常生活において他人との接触や交流の機会を失ってしまった。
中国では広場舞などが盛んに行われているが、これを知った日本人の多くは「中国人はにぎやかなことが好きで、高齢者になっても楽しく過ごしている。日本の高齢者の生活は孤独だ」と羨ましそうに語る。最近は、中日両国の高齢者交流イベントを組織しようとする動きも多いが、これも社会的なニーズを見込んでのものだ。(文・莫邦富)
(人民網日本語版)
関連記事: