18日、浙江省杭州市のアリババ西渓園区にある自身の執務スペースの応接室で取材を受ける馬雲氏(杭州=新華社記者/黄宗治)
【新華社杭州9月20日】中国の電子商取引(EC)最大手、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)董事局主席は中国の教師節(教員の日)にあたる9月10日、同集団董事局主席からの1年後の引退を表明し、大きな注目を集めた。新華社記者は18日、引退に向けた思いや保護貿易主義が台頭する中での経済の行方などについて、馬雲氏を独占取材した。
引退について、「引退」は会社と個人双方にとっての「進歩」
――来年の教師節までまだ一年あるが、アリババ集団の董事局主席として、業務のバトンタッチを除き、この一年でスタートさせたいこと、完成させたいこと、引き継ぎたいことはあるか。
馬氏 引き継ぎの仕事は3年前から始め、すでにほとんど順調に終わっている。今でも毎月数日は張勇と交流を持つようにしている。今後は、グループの国際化戦略やアリババ生態系の構築、文化事業、アリババとアントフィナンシャル(螞蟻金服)との提携などの案件での引き継ぎを進めていく。
――引退後、アリババの戦略にどのような影響を与えていくか。
馬氏 今後もアリババのパートナーとしての役割を務め、その職責をしっかりと担っていくつもりだ。会社の使命やビジョン、価値観、戦略などを体系的に実施していくのが董事長とCEOの役目だとすれば、パートナーの役目はこの4原則をしっかりと守っていくことにある。原則が揺らがなければ会社が揺らぐことはない。
――「引退」には多くの意味合いがある。自身の「引退」にはどんな意味があると思うか。
馬氏 私にとって「引退」は「退く」と言うより「進む」と言う方がふさわしい。会社にとっても私個人にとっても進歩だと言える。アリババの事業を400メートルリレーに例えれば、私は第一走者として100メートルを走ったに過ぎない。
(今の職から)身を引くことは世の中から引退することではない。仕事のシフトが変わるだけだ。私個人にとっても会社にとっても進歩を意味する。会社にはふさわしい人材がおり、私もまだ54歳。少なくともあと16年は新しい事業に携わることができる。
大学の4年間、教師としての6年間、そして事業家としての23年間は、私に多くの蓄積をもたらしてくれた。ECやインターネットの業界では確かに「年寄り」の部類に入るかもしれないが、他の事であればまだまだ「若者」と言える。十四、五年の時間があれば、新しい事業でもっと良いものを生み出せるかもしれない。
経済について、貿易は平和の推進器でなければならない
――アリババは「世界から難しいビジネスをなくす」という使命を掲げているが、保護貿易主義が台頭する現在、ビジネスは難度を増すとは考えないか。
馬氏 まさに困難があるからこそ、この使命はより重要になる。私はアリババの新世代の若者や上層部が、使命に沿って揺るぎなく歩みを進めると信じている。ヨーロッパや南米、ロシア、アフリカのように世界には現在も多くのビジネスチャンスがある。中国も改革を一層推進し、ビジネス環境を一層整備する。
――昨年初頭にトランプ米大統領と会見した際、米国で100万人の雇用機会を創出すると発表した。この約束は実現できるか。次にトランプ氏と会ったら何を言いたいか。
馬氏 この約束は中米間の戦略的協力が友好的に行われ、かつ両国間の貿易が理性的で客観的に発展することを前提としたものだ。元あった貿易の土台はすでに破壊されており、以前の約束をそのまま果たすことはできない。しかしわれわれは、中米貿易の健全な発展を推進する努力を続ける。
中米両国間および世界の貿易はいずれも改善が求められる。貿易は武器ではなく、戦争に用いるものではない。貿易は平和の推進器でなければならない。
教育について、自分で納得のいく自分に育てる
――教育はアリババの経営よりも大変だと語っているが、それも教育に引きつけられる理由の一つか。
馬氏 教育をやりたいと思う理由の一つは、私が師範大学で学び、教師の経験があり、この職業が好きだからだ。もう一つは、これまで世界で悪い人や良い人、素晴らしい人などさまざまな人に出会い、教育の力の偉大さに気づき、教育が「自分で納得のいく自分」になるためのものだと分かったからだ。
ある学生を物理学者に育てろと言われても私にはできないと思うが、自分で納得のいく自分に育てろというなら、それなりのことはできるはずだ。
社会が発展し、技術が進歩する中、今の子どもたちが学んでいることは恐らく、二、三十年もすれば使い物にならなくなるだろう。自分で納得のいく自分に育つことができれば、彼らにとっての一生の財産になるはずだ。
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