――それに対してどうするのか?
我慢できなくて途中で帰国する人もいる。コネや度胸のある人は「黒工」(不法就労)を始める。不法就労を始めることは「黒に走る」などとも呼ばれる。
ここ数年はレートも低く、実習生が不法就労に流れる状況もさらに頻繁となっている。北海道で2度目の長い冬を過ごし終え、更新したビザをもらってから、私も「黒に走」った。
――不法就労にはどんなリスクがある?
不法就労を始めれば、ニュースで出て来るような「失踪人口」になる。その前に仲介に渡した保証金が泡となってしまうだけでなく、いつでも国に送還されるリスクがある。
建築業は不法就労が比較的多い業種だ。私が日本で会った建築労働者は、10人のうち5、6人が不法就労だった。多くの場合、相手側は、こちら側が合法的な身分を持っていないということを知っていても、働き手を必要としているために、黙認して使ってくれる。偽の「在留カード」を見せるだけでいい。私は1000元で偽のカードを作った。
あとは住居だ。身分がないので、多くの場合は中国人から又借りする。そうすれば在留カードは必要ない。私に今部屋を貸しているのは台湾地区の同胞で、私とルームシェアをしているのはやはり不法就労者だ。
私たちは今、横浜の建築現場で塗装工をしている。仕事以外はめったに外出しない。医療保険もないので風邪をひいてもめったに薬を買いに行かないし、警察に目を付けられるのが怖いのだ。
私服警察がたくさんいる。人の多い駅の近くは特にそうだ。東京では5分も歩けば駅に当たる。外に出るとびくびくしてしまう。特別な取り締まりの時には、チャットのQQで、不法就労者が捕まったという情報が頻繁に入って来る。
――捕まるという以外に心配なのは?
仕事がないことだ。実習生に対する多くの報道はこれまで、残業が多いとか搾り取られるとかいったものだった。実際の状況は違う。朝6時に起きて夜11、2時まで働いているような人は、私の知る限り、みんな金が稼げると喜んでいる。最も悲惨なのは、故郷を離れてこんな遠くまで来たのに、金を稼げないことだ。
――日本人のはあなたたちに対する態度はどうか?
私の会った大多数の日本人は皆、とても友好的だった。でもそんな人ばかりでもない。私の同郷人の男性はいつも、会社の日本人にからかわれ、いじめられていた。農場で働く女性は、日本人の同僚にいやがらせを受けたという。相手は彼女らに食べ物を送り、その後、遊びに行こうとしつこくつきまとった。
工事現場の仕事はそんなに大変ではないが、毎日気疲れする。現場から出ると、警察に捕まるのではとまた不安になる。ある時、同僚のものが現場でなくなり、通報することになった。私たち何人かの不法就労者はみなひどく緊張した。ルームメートとよく、あと2、3年いたら狂ってしまうだろうと言っている。日本では、実習生でも不法就労でも前途はない。早く稼いで、故郷に帰ってゆっくり暮らしたいと思うだけだ。
(チャイナネット)
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