ここ数年、中国の読者が日本文学を語るときに、村上春樹と東野圭吾の名がよく挙がるようになってきている。中国各都市の規模の大きい空港の書店の人気書籍コーナーから、三線・四線都市の学校の入り口近くにある小さな書店にいたるまで、この二人の日本人作家の作品が常に並んでおり、日本文学ひいてはフィクション文学作品のヒットメーカーとなっている。大河網が伝えた。
ヒットメーカーという共通の評判がある中で、村上春樹は反抗期の若者のように、ジャズのリズムの中で西洋現代文学に近いスタイルの作品を生み出している。一方で、登場人物の人間性を描くことに長けている東野圭吾は、日本文学の伝統的な審美性と実証に重点を置く推理ロジックという二重の影響を受ける中で新たな境地を切り開いており、推理小説と純文学の垣根を越えた作品をたびたび作り出している。彼が作品で描く「悪」はときに底知れぬ凶悪性を持つ存在となるが、「善」は、まるで真っ暗な部屋でいきなり全てのカーテンを開けて光を取り入れたかのような最高の温もりを感じさせる存在となる。
中国の有名な学者の止庵氏は、「今から一千年前の作品である紫式部の長編小説『源氏物語』と清少納言の随筆『枕草子』は、日本文学が目指す方向を定めた作品として変わらずに存在している」と指摘している。1929年10月、作家で翻訳家の謝六逸は「日本文学」のある巻で初めて「源氏物語」が本になった背景や作者について紹介しており、その概略を一帖ずつ解説した。2015年、中国人作家の周作人が翻訳した「枕草子」が重版され、多くの中国人読者から人気を集めた。このことは、中国で日本文学の普及が始まって80年近く経った今でも、日本文学の審美性を感じられる名作の人気が衰えていない事実を明らかにしている。
中国ではいまだに、夏目漱石、谷崎潤一郎、芥川龍之介、川端康成、太宰治、三島由紀夫などの明治維新後に登場した偉大な日本人作家たちのファンがたくさんいる。今年初めに、「日本の張愛玲(アイリーン・チャン)」と呼ばれた日本人作家の森茉莉の作品が初めて中国大陸部で中国語版が出版され、中国に紹介される日本文学が新たな節目を迎えた。また、同年、東野圭吾の作家デビュー30周年記念作品「ラプラスの魔女」が中国大陸部で発売され、中国における日本文学普及の歴史に新たな1ページが刻まれた。なぜなら同作品は中国で最も人気がある日本人作家が自分の今までの作品イメージを一新させる作品だったからだ。
翻訳作品を出版する磨鉄図書は、東野圭吾の「ラプラスの魔女」以外にも、日本の有名推理作家の湊かなえの「絶唱」、有名映画監督の岩井俊二と作家の乙一が手がけた「花とアリス殺人事件」、日本のファンタジー小説の巨匠である夢枕獏の著作であり、先ごろ中国人映画監督の陳凱歌(チェン・カイコー)によってリメイク映画が撮影された「妖猫伝」の中国語版を立て続けに出版するという。
(人民網日本語版)
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