かつて米国がたどった道
あまり知られていないが、実はアメリカの大手電機メーカーもかつては日本のような、長期雇用採用していた。だが1980年代以降、日本の電機メーカーとの熾烈な競合を経て、GEやIBMといった大手メーカーは徹底したコスト管理と10万人規模のリストラにより、今日の復活の基礎を築いた。
恐らく、ソニーの歴代の経営陣も、ウェルチやガースナーと同じ道を進もうとはしたのだろう。だが成功しなかった。ちょうど先日行われた出井伸之元CEOのインタビューは、その点を率直に認めている。
「国の規制も障害になった。日本は従業員を解雇できない国だ。(企業が業態を)変えていくことが法律で想定されていない」
要するにソニーを狂わせたのは米国型経営ではなく、むしろ米国型経営の不徹底が原因ということだ。
終身雇用という形で大企業に国民の生活の面倒を見させれば、社会は安定しているようには見える。大企業に入れなかった人たちはどうするのか?右派ならば「勉強しなかったんだから自己責任」、左派ならば「終身雇用を守れない中小企業経営陣が悪い、連合と一緒に連帯しよう」と言い訳で適当にごまかしておけばよい。実際、そうやって臭いものには蓋をしつつ、日本は(新卒者向けとしては)きわめて貧弱で安上がりな社会保障制度を続けている。
しかしこの社会保障制度は、企業から活力という最も大事なものを徐々に奪い、やがて経済の停滞という形で、国民全体に大きなツケをもたらすことになる。これはかねてからの筆者の持論だ。ソニーという企業はその状況に陥っているのかもしれない。
最後に、ソニーの今後について記しておく。ソニーが「活力のある現場」を取り戻すには、膨れ上がった管理職を減らし、年功に関係無しに挑戦できるような仕組みを作るべきだ。他に方法はない。筆者は管理職はせいぜい2割、出来れば1割程度にしするべきだと考えている。給与については、役割給やボーナスとして序列に関わらず分配する仕組みにするべきだ。
そしてそれは、同社が昨年に発表した「年功序列の廃止と職務給への一本化」と見事に合致するものだ。それが間に合うかどうかは分からないが、同社が進むべき道の一端であることは間違いない。
おそらく、これからもメディアや業界外の関係者は、「脱アメリカ型、原点回帰」の流れでベテラン優遇や終身雇用を推すだろうが、ソニーには気にせずどんどん先に進むことを薦めたい。
(チャイナネット)
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