白皮紙を展示しているミャオ族製紙国家指定無形文化遺産継承者王興武さん。(丹寨=新華社記者/盧志佳)
【新華社北京12月18日】紙、それとも紗(しゃ、薄く透き通る絹織物)?重さわずか1・8グラムで紗のように軽く、薄く透き通り、長い間折り畳んでも痕が残らない、しかも耐久(たいきゅう)年数は実に1500年。これは一体どんな紙で、どのように作られたのだろうか。
中国貴州省丹寨(たんさい)県石橋(せききょう)村の職人たちは、昔から伝統の製紙技術で生計を立ててきた。専門家の考証によると、この製紙法は漢代の製紙法と一致しており、2006年に、中国第1期国家指定無形文化遺産リストに登録された。
「私たちは紙をすくのに、カジノキの皮だけを原料に用います。これは中国古代の製紙法で使われた主原料と同じです」とミャオ族製紙国家指定無形文化遺産継承者王興武(おう・こうぶ)さんは語った。
王興武さんは18代目の継承者として、幼い頃から父親について紙をすいてきた。1980年代後半、機械による製紙技術が盛んになると、従来の製紙法は次第に廃れていった。1998年、香港の事業家が王さんを訪ね、照明に使用する特殊な紙を注文した。王さんは2年の歳月を費やし、9千回折り畳んでも破れない白皮紙(はくひし)を開発した。非常に満足した事業家は、すぐに王さんとの正式な提携を決めた。資本金を得た王さんは、村の人々と共に合作社(がっさくしゃ、協同組合)を設立し、共同で紙の製造を始めた。
2006年、古代の書物を修復するための紙を探して各地を回っていた中国国家図書館の専門家が、石橋村の製紙技術が古代の製紙技術と類似していることを発見し、王さんに修復用紙の開発を頼んだ。王さんは、2年をかけて要求通りの修復用紙を作った。専門家の検査によると、この紙のPH値は7・8で、耐久年数は実に1500年に達することが分かった。
紙の製造には、科学的な製紙法の他に、職人の技術を必要とする。王さんによると、たとえ材料の配合が正しくても、30年の製紙経験がなければ、セミの羽ほどの薄い紙は作り出せないという。
王興武さんの話によると、世界でこのような古代書物の修復用紙を製造できるのは、日本とここの2カ所だけだという。
政府による大々的な普及促進と支援を受け、石橋村は現在、丹寨県ひいては貴州省の無形文化遺産の「新しい顔」となった。また、同県を訪れて紙を購入し、伝統的な製紙法を体験して、オリジナルの花草紙(草花をすき込んだ紙)を製作する観光客が後を絶たない。
「現在、80人が合作社で働いていて、年商は約500万元です。職人たちの平均月収は3500~4000元で、熟練職人の場合8500~9000元になった」と王興武さんが記者に伝えた。(記者/郭丹 王鐘毅 馬芸萌)