韓国の文在寅大統領は当選からわずか1週間内に、多くの重要国の首脳と電話会談を行い、速やかに米中日ロ及びEUに派遣する特使を指名した。「特使外交」により、文在寅時代の韓国の外交が幕を開けた。訪米日特使は17日に出発し、訪中特使も18日に出発した。文大統領がこの「特使」外交でどのような情報を伝えるかに要注目だ。
「首脳外交」の地ならしをする「特使外交」
文大統領は朴槿恵前大統領の弾劾により、リーダーを失った韓国の政界を引き継いだ。韓国は半年以上に渡り、海外と「首脳外交」を展開していない。そのため今回の特使外交の最大の目的は、今後の首脳外交の事前準備を整えることだ。
韓国の政界が混乱した半年以上に渡り、韓国の外部環境にも変化が生じた。中米両国間系が徐々に安定化し、朝鮮半島の緊張情勢が依然として深刻だ。朝鮮半島の主な当事国である韓国の地位と影響力が低下を続けている。
文大統領が先週就任を宣言すると、主要大国と電話会談を行い、朝鮮の核問題への観点と、韓国の今後の外交発展方針を説明した。文大統領はその後直ちに、親書を持つ特使を主要大国に派遣し、さらに意思疎通を図った。今回注目すべきは、伝統的な周辺4強の他に、EUにも特使を派遣したことだ。文大統領が朝鮮半島という地域的な制限を超越し、より全面的で多元的な外交を展開することで、より広く支持を集めようとしていることが分かる。速やかに特使外交を展開し、文大統領のやる気あふれる前向きな姿勢を示している。韓国の朝鮮半島における役割を強調し、一定の主導権を取り戻す狙いがある。
「特使外交」で世界と協力、中韓関係を左右するTHAAD問題
朝鮮半島の緊張状態が続いているが、これは今回の特使外交とつながっている。米韓同盟問題、韓日の慰安婦・軍事協力問題、中韓・中ロのTHAAD配備問題など、韓国と周辺4大国の最も主要な議題となっているのは安保問題だ。特に南北の対話の実現を目指す文大統領は、適切な時期に平壌を訪問しようとしている。これらの目標を実現するためには、まず朝鮮に態度を変えさせ、対話の軌道に戻す必要がある。これには周辺諸国の協力が不可欠だ。朝鮮に制裁するにせよ、朝鮮と対話・協力するにせよ、まず重要になるのは韓国と世界の協力の強化だ。これは韓国の力が及ぶ範囲内で、最も実現性の高い出発点だ。
訪中する韓国の特使(李海チャン氏)にとって、中韓関係の改善は最も重要な任務になる。THAAD問題は、中韓関係の健全かつ安定的な発展を妨げる一大障害物であり、中韓関係が真の「砕氷」を実現する鍵でもある。そのため中国のTHAADへの懸念をいかに解消するかが、当然ながら最優先の課題となる。THAAD問題で独断専行した朴前政権とは対照的に、文大統領は就任後間もなく重量級の知中派の人物を特使として中国に派遣した。さらに中韓両国の首脳は先ほどの電話会談で、双方の重大な関心事をめぐり共通認識を形成した。これらは文大統領の対中関係への重視、中韓関係改善の願いを示している。この積極的な、意思疎通の強化に前向きな態度は、双方の協議による解決の友好的な雰囲気を醸成しており、中韓双方の折衷案を模索する上で有利だ。
配備延期で中国に配慮か
THAAD問題は本質的に中韓両国の問題であるだけでなく、中米韓の問題でもある。韓国は朝鮮への備えから、韓米同盟を維持しようとしている。そのためTHAADが韓国から撤収されるかは、米国の最終決定にかかっている。韓国は最終決定を下すことができないが、影響を先延ばしにすることはできる。現状を見る限り、朝鮮が今度も核ミサイル実験を行う可能性を考えると、THAAD配備に明確に反対していない文大統領が直ちに配備を取り消す可能性は低い。しかし中韓関係を改善しようとしている文大統領が、手をこまねいて見ていることはない。そのため文大統領は配備の時期を延長することで、中国側に配慮する可能性が最も高い。(筆者:劉鑫 ソウル大学校政治外交学部修士)
(チャイナネット)
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