報道によると、アジアインフラ投資銀行(AIIB)にはこれまで57カ国が創設メンバーとして参加の意思を表明していたが、最近また新たに10数カ国が参加を申請したという。ここからわかることは、設立準備が進むAIIBが新たな参加の波を迎えているということだ。参加国は70カ国に達し、設立から約半世紀を迎えるアジア開発銀行(ADB)の参加国数を上回る見込みだ。(文:沈丁立・復旦大学国際問題研究院副院長、教授。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
AIIBはなぜこれほど歓迎されるのか。カギはAIIBの理念に強い求心力があることだ。AIIBはアジアのインフラ建設にサービスを提供することを主旨とし、アジアのインフラ建設投資のニーズに全面的に対応するものだ。アジアのインフラ建設は毎年7千億ドル(約86兆2260億円、1ドルは約123.2円)から8千億ドル(約98兆5440億円)の巨額の資金を必要としており、世界銀行には年間1千億ドル規模、ADBには年間100億ドル規模の貸出能力がそれぞれあるが、これではアジアはもとより、世界でますます増加するインフラ建設投資への熱く切実な期待に応えることはできない。
AIIBは時代の要請を受けて誕生したものだ。アジアのインフラ建設を手がける多国間専門銀行として、アジアや世界全体の資金調達需要に応え、アジアの参加国のインフラ建設ニーズを審査し資金を貸与することを通じて、広大なアジアの参加国に発展のための新たな資源を提供することを目指す。アジアが世界で最も発展の活力に富んだ地域であることを踏まえ、アジアの成長に力強いエネルギーを注ぐための努力を呼びかければ、参加国はすぐに応じるとみられる。
そこで、AIIBの創設は市場経済の法則に合致するだけでなく、発展を支える公益性も帯びている。利他的な公共財をそろえるだけでなく、貸し手と借り手が協力して利益を上げるウィンウィンのメカニズムも備える。資金の提供者もプロジェクトの建設者も、AIIBのプラットフォームで相互利益の協力を実現させることができる。だからこそ、AIIB創設メンバーの列には、欧州の発達したエコノミーもあれば、アジアの発展途上のエコノミーの姿も多くみられるのだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)の全加盟国10カ国が、規模の大小や発展水準の違いにもかかわらず、すべてAIIBに参加した理由はここにある。
注目されるのは、アジアはインフラ建設の発展を渇望するが、これまではアジアに十分に満足のいく誘導事業を提供する者はいなかった。中国は急速な発展にともなって、多くの外貨準備を獲得し、インフラ建設を展開するための豊富な経験と技術力を備えるようになった。AIIBという多国間国際金融協力は、中国が推進するからこそ、これほど急速に設立の準備が進んだといえる。中国は発展を遂げ、一定のインフラ建設能力と資金提供力を獲得し、次はAIIBというアジアの多国間発展メカニズムの提唱を考えた。また中国は自国を資本と技術の純輸入国から輸出国へとある程度転換させることに成功した。中国のバージョンアップはアジアの進歩のモデルケースだ。中国はアジアに援助の手をさしのべ、アジアがより大きな規模で進歩を遂げるよう後押ししていく。
最近、中国と韓国、中国とオーストラリアが、それぞれ自由貿易協定(FTA)を締結した。このことは各二国間FTAの中での国民生活に新たなチャンス、新たな状況をもたらすものであり、地域経済と社会の発展ニーズに合致している。これと似た二国間FTAや多国間FTAがこれから次々に登場する見込みだ。こうしたFTAは関連国の経済発展と国民生活の改善を後押しし、より広範な地域との連動をもたらし、国際社会の経済貿易の質の螺旋状の向上を喚起するものとなるからだ。
AIIBはアジアに軸足を置きながら、目線は世界に広がる。AIIBのトップデザインによれば、その運営と発展は広くアジア全体に恩恵を及ぼし、さらにはアジア・太平洋の枠を越えて、世界全体に恩恵を与えることになる。そこでAIIB建設の意義は、1つ以上の二国間FTAの枠を超えて、自由貿易のバージョンアップに基礎的で力強い保障、また後ろ盾となる力強い保障を提供することにある。アジアの道がつながり、物資が行き交い、貿易が盛んになれば、世界の各国・各地域にも波及し、より広い地域でインフラ建設があまねく発展することになる。
AIIB、ADB、世界銀行、これらはどれも人類が利益を共有し、協力し合う一種の公共財だ。たとえば中国、日本、米国は発展段階が異なり、発展の経験も能力もさまざまだが、地域と世界の発展を協力推進するという目標では一致するはずだ。各国は協力を強化し、お互いに力を貸し合い、3つの銀行をそれぞれの特色を備えた、大陸レベル、また世界レベルの開発協力プラットフォームに育てることができるだろうし、そうしなければならない。
(人民網日本語版)
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