藤原紀香が演じた楊貴妃
▽李白が妖術使いに?
日本人が作品の題材として最も多く取り上げている唐代の人物は楊貴妃だ。ドラマや映画だけでなく、舞台劇や漫画作品にも登場している。例えば日本の国宝級監督である溝口健二の1955年の映画「楊貴妃」はとても有名な作品だ。宝塚歌劇団は2004年に歌劇「花舞う長安-玄宗と楊貴妃」を公演した。中国人にとっては「美しさゆえに国を滅ぼす元凶になった」イメージの強い楊貴妃だが、日本の文芸作品では女神のような存在として扱われている。小説家・井上靖はこれについて「日本人はもともと、おとなしく従順で、自分の運命を男性に委ねるような女性が好き。この考え方の違いが両国における認識の差をもたらした」と分析している。このため、日本人は強い女である「武則天」を、映画やドラマの題材にしたいという情熱が沸きにくいことだろう。
日本の歴史人物を通して、唐代の様子が描かれるケースもある。例えば遣唐使の小野妹子、日本の高僧・空海などが主人公となった作品では、唐は「世界で最も強大で豊かな国」と描写されている。また、日本人は李白を高く評価しており、阿倍仲麻呂が出てくる作品には毎回李白が登場する。阿倍仲麻呂は確かに李白の友人であった。興味深いのは、李白が才気あふれる「美男子」であるばかりか、平安時代の陰陽師安倍晴明さながらの妖術の使い手として描かれている点だ。