【新華社南京3月10日】春は例年なら中国で最も雇用が盛んになる時期だが、今年は新型コロナウイルスによる肺炎の流行で大卒者を中心に雇用の勢いが鈍っている。また、非常に多くの出稼ぎ労働者が中国西部から動けなくなっているため、東部の一部地域は人手不足に陥っている。
雇用への影響を緩和するため、中国は雇用創出、農村部の出稼ぎ労働者および大卒者の雇用促進、零細企業や家族経営事業者が抱える問題の解決に向けて対策を取り始めた。
▽出稼ぎ労働者への支援強化
2019年、中国の地方出身の出稼ぎ労働者は2億9千万人で、7500万人が出身省から出て働いていた。新型肺炎流行の影響を最も強く受けたのがこの人たちだ。
延長された春節(旧正月)休暇後の生産再開のため、各地方当局は労働者を自宅から工場に直接運ぶチャーター便を手配している。
新疆ウイグル自治区からチャーター機で江蘇省無錫の蘇南碩放国際空港に到着した出稼ぎ労働者。(2月26日撮影、南京=新華社記者/李博)
数日前には140人以上の出稼ぎ労働者が貴州省銅仁市から江蘇省崑山市までチャーター機で運ばれた。
健康証明書を携えた出稼ぎ労働者たちは体温を測定してチャーター機に搭乗。着陸後はすぐに高性能カメラモジュールメーカー、崑山丘鈦微電子科技のバスに乗り込んだ。人との不要な接触を避けるためだ。
同社の王建強(おう・けんきょう)総経理は、3月向け受注は前年同月比70%増加したが、新型肺炎流行による人手不足のため納期を守れるかは不透明だと述べた。
企業が緊急に労働者を必要としていることを知った各地方の政府は、人手不足の穴を埋めることを決めた。崑山市政府の劉平(りゅう・へい)氏は「銅仁市の関係部門と協力して700人を超える労働者を崑山に送った。半数は貧困層の人で、航空便と鉄道の運賃を無料にした」と語った。
安徽省宿州市で、江蘇省崑山市に向かう特別列車に乗り込む出稼ぎ労働者。(2月20日撮影、南京=新華社記者/李博)
劉氏は、この措置により労働者の雇用確保と崑山市の人手不足の緩和が一度にできる述べ、「さらに重要なのは、発展が進んだ東部から発展途上の西部への将来の産業シフトを見越した人材プールの開発ができることだ」と指摘した。
多くの地方当局は地元での雇用確保にも取り組んでいる。
江蘇省淮安市政府は、働き口の誘致、雇用補助金などといった出稼ぎ労働者の地元就労奨励策を矢継ぎ早に打ち出した。
周東霞(しゅう・とうか)さんはオンラインで何度も就職選考を受けた末に、地元の帽子製造工場に月給4千元(1元=約15円)の職を得た。
昨年周さんは上海のケーブル工場で働いていたが、春節休暇後は自宅に足止めされていた。一家の収入を心配していたところ、帽子工場が周さんのような出稼ぎ労働者を主な対象に採用活動を始めた
「これで働きながら家族の世話もできる」と周さんは言う。
▽企業に優遇措置も
大企業は新型肺炎流行の影響に長期間耐えることができるが、中小企業はそれほど強くはない。
中国中小企業協会(CASME)が中小企業6千社余りを対象に行った調査によると、回答者の70%近くが新型肺炎の流行で営業利益が下がったと答え、90%近くが新型肺炎の流行が続けば今後3か月以内に資金がショートする可能性が高いと答えた。
新型肺炎が流行する中、中国政府は企業を支援し、また失業率を下げるため、補助金や税・社会保険料の減免など一連の施策を打ち出した。社会保険料の減免は総額5千億元以上になる見込みだ。
6日、江蘇省蘇州の蘇州通錦精密工業の生産ラインで勤務中の作業員。(蘇州=新華社配信)
雇用の安定を図るため、多くの企業がオンライン職業訓練プログラムを提供している。一部の地方政府はオンライン職業訓練を受ける労働者に補助金まで出している。
▽大卒者の就職ルート拡大
今年の中国の大卒者は874万人で、史上最多記録を更新する見通しだが、新型肺炎流行のため企業が採用規模を縮小したり、採用を延期したりしたため就職が難しくなっている。
中国教育部は、オンライン大学採用サービスや修士課程進学者を増やすなど、大卒者の就職難緩和策を発表した。
今年夏に江南大学を卒業予定の李虎(り・こ)さんは、春のオンライン大学採用サービスで就職先を探している。例年なら今は就職活動が盛んに行われ、多くの企業がキャンパスに出向いて学生に自社を売り込む行う時期だ。
新型肺炎の流行が始まってから一度も大学のキャンパスに戻っていないという李さんは、「大学の就職システムで履歴書を送ると、条件に合った就職先がスマートフォンに送られてきた」と説明する。
重慶市秀山トゥチャ族ミャオ族自治県で開かれた就職イベントで、インターネットを使って求職者の面接をする従業員(右)。(2月27日撮影、重慶=新華社記者/劉潺)
大学は今月オンライン就職フェアも開催する。800社近い企業から4万8千件を超える求人情報が提供される見込みだ。
中国教育部の翁鉄慧(おう・てつけい)副部長は、就職の機会を増やすため中国は基礎教育、プライマリ・ケア医療、コミュニティーサービスの各分野で人材の採用を増やしていくと述べた。
新型肺炎の発生は雇用市場に大きな打撃を与えたが、新たな成長エンジンの開発や従来からの成長エンジンの改善で、依然として大きな雇用機会があると翁副部長は述べた。
当社のコンテンツは著作権法によって保護されます。無断転用、複製、掲載、転載、営利目的の引用は禁じます。