【新華社ワシントン5月7日】米ホワイトハウスはこのほど、米国が欧州連合(EU)、カナダ、メキシコに対する鉄鋼・アルミニウムの関税導入に関する決定を6月1日に先送りすることを決めたと発表した。交渉期限は30日間。今回の先送りは、各方面の議論を巻き起こし、猶予措置の延長は問題解決にならず、市場や企業にとっては、不確定要素を増やすだけとみられている。
トランプ政権による鉄鋼・アルミ関税に関する最新の措置は、米国が推し進める一国主義と保護貿易主義に対する、同盟国との意見の食い違いを明らかにし、同盟国との貿易摩擦を更に深める可能性がある。
トランプ政権は3月23日より、「国家安全保障」の観点から、鉄鋼とアルミニウム対する輸入制限措置を発動。鉄鋼に25%、アルミに10%の追加関税を課した。ただ、EU、カナダ、メキシコなどには、関税の適用を5月1日まで一時的に猶予した。これを切り札に貿易交渉を行い、米国に有利となる譲歩を引き出す狙いだった。
EUは、米国の鉄鋼・アルミ関税を巡り、中国が世界貿易機関(WTO)に提訴した問題で、WTOに紛争解決手続きへの参加を要請した。EUは、米国の関税措置はEUの鉄鋼・アルミ製品の販売と輸出に深刻な影響を与える可能性があるとの見方を示した。鉄鋼・アルミ関税の猶予措置が延長されなければ、米国の関税政策はEUの輸出を脅かす「巨大な損害」となる。
先週、マクロン仏大統領とメルケル独首相がそれぞれ訪米し、鉄鋼・アルミ関税などの問題についてトランプ大統領と会談したが、成果は得られなかった。その後、メルケル独首相、マクロン仏大統領、メイ英首相は電話会談を行い、共同でEUの利益を損なう米国の貿易政策に対抗することで合意に達した。
WTOの物品の貿易に関する理事会が4月末に開催した第1回会議で、ロシア、インド、中国などWTO加盟国8カ国も米国の関税措置に懸念を示した。中国は、米国が通商拡大法232条に基づく措置として発動した輸入制限は、多国間貿易の安定を大きく損ない、国際サプライチェーンをゆがませており、大きなマイナス効果を生むとの認識を示した。また、米国が一部の国に導入した猶予措置も、WTO協定の最恵国待遇原則に違反している、と主張した。
米国ピーターソン国際経済研究所シニア・フェローのチャド・バウン氏は、米国が輸入する鉄鋼・アルミニウム製品が国家の安全に脅威だと言い張るならば、「基本的にいかなる国家も、いかなる輸入製品も、その国家の安全の脅威となると言え、貿易障壁を設けることになる」と指摘する。そうなれば、グローバル貿易協定は全く意味のないものになってしまう。トランプ政権のやり方は、米国貿易政策の不確定要素を増加させ、貿易相手を困らせ、各国企業の経営をも難しくさせている、と指摘した。
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