英現地時間6月23日に実施が予定されている、欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う英国の国民投票の行方に、世界市場は極めて大きな関心を抱いている。
まずはっきりさせておかなければならないのは、いわゆる「英国のEU離脱」とは、もちろん「地理的」な離脱ではなく、「政治的」な意味合いでEUと袂を分かつことを意味している。経済のグローバル化という背景のもと、英国がEUを離脱してしまうと、それによって生じるバタフライ効果(極めて仔細なことが諸々の変化を誘発して大きな変化をもたらすこと)は、疑いもなく世界金融市場に大きな衝撃をもたらすことが予想される。
このところ、投資家のリスク回避ムードが世界中に広く蔓延しており、市場の不安定性も高まっている。投資家は続々と米国債に投資、ドイツ スイス 日本の国債利回りは、軒並みマイナスまで下落、米国債の利回りも4年前の最低レベルにまで落ち込んでいる。米金融界の著名投資家ジョージ ソロス氏は21日、「もし英国のEU離脱が決定すれば、『ブラック フライデー』を引き起こす可能性がある。英ポンドは一斉に売られ、英国経済は衰退の道を突き進むだろう」との見通しを示した。
○人民元の国際化に影響が及ぶ可能性
中国がまず衝撃を受けるのは、人民元相場だろう。
世界の主要国際金融センターであるロンドンは、人民元にとってアジア以外の最重要取引市場のひとつとなっており、人民元の国際化戦略を進める上での重要な鍵を握っている。人民元の国際化は、中国が以前から掲げている努力目標である。人民元の国際化によって、中国が人民元建て債券を発行し、外貨への依存から抜け出すことが可能となり、さらには世界金融に対する影響力を備えた本当の金融大国となることが可能だ。英国のEU離脱が決定すれば、ロンドンがこれからも人民元の国際化のための重要拠点であり続けるかどうかは、きわめて疑わしい。盤古シンクタンク マクロ経済研究センターの張明シニア アナリストは、「長期的な視点で見た場合、英金融業が直面する衝撃は、人民元の国際化プロセスにも影響を及ぼすであろう。欧州統一大市場において、欧州で最も重要な人民元オフショアセンターであるロンドンの地位が凋落することは、人民元オフショア市場の発展のマイナス要因となるだろう」との見方を示した。
英国のEU離脱が決まれば、英ポンドとユーロが下がり、さらには市場のリスク アペタイト(リスク許容度)がダメージを受け、ドル高を推し進めることになり、対ドル人民元レートは大きな圧力にさらされることになる。
○海外通販、訪米旅行に不利益 日本製品通販コスト上昇も
英国のEU離脱が決まれば、英ポンドとユーロが暴落し、ドル高が進むと予想される。人民元レートもある程度影響を受け下落が進むが、対英ポンド 対ユーロ人民元レートはかなり持ち直すに違いない。これは、欧州旅行に出かける場合は、人民元支出が少なくなることを意味する。だが、何事にも良い面と悪い面がある。訪米旅行や米国商品の海外通販は、割に合わなくなる。日本での「爆買い」に精を出す中国人にとっては、リスク回避通貨として日本円買いが増えるにつれ、対日本円の人民元レート安が進み、それによって訪日旅行コストも上がる。日本商品の海外通販もまた然り、である。だが、日本銀行(中央銀行)は、世界の主要国 地域の中央銀行と調整の後、7月28 29日に開かれる金融政策決定会合までに、円安誘導のための景気刺激策を打ち出す可能性があるとの見方もある。
○より慎重となる英国不動産への投資
中国の投資家はここ数年、英国不動産市場に熱い視線を送り続けてきた。だが、EU離脱の是非を問う国民投票の実施が決まったことで、英国不動産市場にも影響がもたらされた。統計データによると、投資額については、2016年第1四半期は前年同期比31%下落、ロンドン地区では11%下落した。英国のEU離脱が決まった場合、それに伴い英ポンドが暴落し、英国不動産価格も下落する可能性が高い。そうなっても英国の不動産に関心を持ち続ける中国の投資家は、果たしているだろうか?ジョーンズラングラサール(仲量聯行)が投資家84人を対象に実施した調査によると、賃借者の34%、不動産投資家の45%は、「国民投票の実施までは、英国不動産に対して様子見とする」と答えた。調査対象となった賃借者のうち10人が、「EU離脱が決まれば、様子見の態度をさらに強める。賃借の機会は減るだろう」と答えた。
不動産投資家は、やや楽観的なようだ。回答者の62%は、「英国のEU離脱が決まっても、それまでの投資戦略を変えるつもりはない」としている。だが、「ロンドンのオフィスビル市場は国民投票の結果による衝撃を最も受けやすい」と考える人は77%を占めた。
(人民網日本語版)
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