最近「匠の精神」が中国国内で話題になればなるほど、日本で買った爪切りを思い出さずにはいられない。見ためはシンプルだが、初めて匠の精神の魅力とそこから生まれる経済的な利益をこの身で感じさせられた一品だ。南方日報が伝えた。
今年1月、出張で日本に行き、帰国前にちょっとした手土産として化粧品などを買おうと思い、ごく普通のドラッグストアに立ち寄った。そして棚に並べられたやわらかいプラスチック製の箱に入れられ、やや誇張した感じの爪切りに目をとめた。価格は1100円、人民元に換算すると70元ちかい。
中国国内のスーパーなどで普通に売っている爪切りは普通せいぜい数元程度。ではこの「日本製」爪切りはなぜ70元もするのだろうか?ネットで調べてみると、中国国内の多くのネットユーザーがこのブランドの爪切りを高く評価していたので、試しに買ってみることにした。
帰国して仏山に戻り、使ってみると、すぐにその違いを知ることになった。簡単に言うと、切れ味が違う。爪を切る時の動作がとてもスムーズなのだ。家にある別の爪切りでやや厚い爪を切ろうとすると、時にかなり力を入れなければならなかったり、切った爪が飛び散ったりすることがあった。以前はこんなことは避けられない普通のことだと思っていた。しかしこの日本の爪切りはそんなこともなく、切った爪が飛び散るようなこともとても少なくなった。これは私が爪切りのために「利用者の声」を書きたいと思った初めての衝動だった。
その後、オンラインショップの「淘宝」ではこれが120元(約2000円)で売られていることを知った。一部の日本から直接郵送する代理購入の店ではこの値段の他にさらに95元の郵送費が加算されていた。それでも購入を希望する人は少なくなく、しかも商品を受け取って、使用した後で高く評価している。しかも同じようなネットショップでは少なくとも十数種類の道具が入った中国製の爪切り「セット」がたった20元ちょっと(約340円)で売られているのだ。
爪切りというほとんどもう何ら技術的要素を含むわけでもなく、ハイテクとは一切関係無く、高級ブランドや高い付加価値ともほとんど関係の無いような小さな日用品が、どうしてこれほど多くの中国国内の消費者に何倍、何十倍もの価格でも買いたいと思わせることができるのだろうか?
数倍の価格差があっても、消費者が日本の爪切りを選択するには、衝動買いという要因や偶然性もあるかもしれない。しかしこのような価格差が長期的に存在し続けることができるのは、利用者の自己体験や製品の性能にも必ずや原因があるだろう。