【新華社北京10月4日】世界的な感染拡大や長引く経済不安、一国主義や覇権主義の台頭など、世界が深刻な課題に直面する中、国連では一連のハイレベル会議が開かれ、人類が進む道を模索するための議論が行われた。
中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席はこの重要な場で演説を複数回にわたり行い、時代の根本的問題に対する解決策や、世界各国と団結してより良い未来を共に築き上げるビジョンについて述べた。
習近平氏は第75回国連総会の一般討論演説で「平和と発展が時代のテーマであることに変わりはなく、各国人民の平和・発展と協力・ウィンウィンへの期待は一層強まっている」と指摘。「今回の新型コロナウイルス感染症が人類にとって最後の危機ではなく、われわれは手を携え、さらに多くの世界規模の試練に備えなければならない」と呼び掛けた。
基本理念としての多国間主義
国連は75年前の歴史的な節目に創設された。二度の悲惨な世界大戦を経て、恒久平和を守り、共同発展を促進する目的で創設された国連は、まさに多国間主義の縮図となっている。
グテレス国連事務総長は今年の国連総会の開幕式で演説し、グローバル化や統合の基盤である多国間システムが新たなこう着状態に陥っていると警告。理由として、条約脱退や軍事・経済的いじめの慣行などの顕著なリスクや課題にさらされていることを挙げた。
習近平氏は国連創設75周年を記念するハイレベル会議で、この75年間に多国間主義が急速に発展したと述べ、「世界的な問題は皆が話し合って取り組むべきだ」と訴えた。
習近平氏はまた「世界が直面する問題は多い上に非常に大きく、国際的課題は日々増加している」と述べ、「対話と協力によってのみ解決が可能であり、またそうすべきだ」と強調した。
このような対等な協議へのコミットメントは、習近平氏の外交思想の重要な特徴だ。2013年の国家主席就任以来、習近平氏はさまざまな国際的な場でこの原則を繰り返し提唱し、一国主義ではなく多国間主義を、ゼロサム思考ではなく協力・ウィンウィンを力強く主張してきた。
習近平氏は5年前の国連総会で行った演説で、各国が互いに依存し合い、共通の未来を共有していると指摘。国連憲章の趣旨と原則に対するコミットメントを再確認し、協力・ウィンウィンを特徴とする新しい国際関係を構築するための国際的な努力が必要だと呼び掛けた。
中国は長年にわたり、多国間主義の提唱者と実践者であり、また国連を中心とした国際システムの擁護者であることを示してきた。
グテレス氏は新華社とのインタビューで、中国を「多国間主義の柱」と称し、「平和と安全を守り、持続可能な発展を促す国連の世界的な活動を強化するため、中国が今後も積極的な政策を継続することを期待している」と述べた。
鍵は「共同発展」
現在の世界を悩ませているさまざまな課題には、開発問題が潜んでいる。これらの問題は、新型コロナウイルスの世界的な流行とその多面的な影響により深刻さを増している。
習近平氏は国連会議で「開発問題を世界のマクロ的枠組みの際立った位置に据え、生存権と開発権の促進と保護を一層重視しなければならない」と語った。
習近平氏はまた、中国が平和的で協調的かつ開かれた共同発展に取り組んでいくと強調。「われわれは国内の循環を主体とし、国内と国際の循環が互いに促進し合う新たな発展の枠組みを徐々に形成することで、中国経済の発展の余地を生み出し、世界経済の回復と成長に原動力をもたらす」と述べた。
中国は共同発展を提唱し、「一帯一路」や中国国際輸入博覧会、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などのプラットフォームを立ち上げてきた。これらは感染拡大が引き起こした世界的な経済不況の中で、一筋の光をもたらしている。
例えば「一帯一路」は過去7年間で着実な発展を遂げ、今では世界最大の国際協力プラットフォームに成長。中国が発起したAIIBは、24の加盟メンバーに200億ドル(1ドル=約105円)近くのインフラ建設資金を提供してきた。
中国は女性の発展促進でも大きな進歩を遂げ、包括的発展へのコミットメントを体現している。中国は世界保健機関(WHO)から、女性と子どもの健康分野で急成長を遂げた10カ国の一つに認定された。習近平氏は国連の会議で「女性を支援し、女性が充実した生活を送る」ために協力した努力が必要だと訴えた。
習近平氏が最優先事項としている貧困脱却支援では、期限通りに現行基準における農村部の貧困者全てを貧困から脱却させ、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の貧困削減目標を10年前倒しで実現する予定だ。
「共有の未来」を道しるべに
グテレス氏は世界の現状について「多国間の課題があふれ、多国間の解決策が不足している」と指摘した。習近平氏はこうした現状を踏まえ、全ての国に対し、より良い共有の未来を構築するためには、民族や文化、イデオロギーの違いを越え、手を携えることが必要だと訴えた。
2013年に初めて国際社会に提唱した「人類運命共同体の構築」という理念は、習近平氏の外交の中心的概念となり、国際関係について発言する際の一貫したテーマとなっている。
習近平氏は、人類の未来に対する生態系の重要性を強調し、各国が人類文明全体に対する大きな責任を担うよう呼び掛けた。経済発展と生態系保護の協調を促し、繁栄したクリーンで美しい世界を共に築かなければならないとも語った。
中国が国際社会と共に新型コロナウイルス感染症と闘ってきたことは、このビジョンに対する献身的な姿勢を示してきた。
全ての人が安全でなければ誰もが安全ではないとの考えに基づき、中国は34カ国に医療専門家チームを派遣し、感染対策を支援。これまでに150以上の国と国際機関に支援を提供してきた。
人類の未来を脅かすもう一つの課題である気候変動に関し、習近平氏はこのほど開かれた国連の会議で、中国が2030年までの二酸化炭素(CO2)排出量のピークアウトと2060年までのカーボンニュートラル(炭素中立)の実現を目指していると述べた。
英ロンドンを拠点とする気候保護ネットワーク「クライメート・グループ」のヘレン・クラークソン最高経営責任者(CEO)は新華社とのインタビューで「他の国々が気候変動対策をどう進めるかを考える上で、中国の努力が重要な役割を果たすことは間違いない」と語った。
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