1本の毛から、無数の分身を生み出す―「西遊記」の一幕が現実のものとなった。メスのクローン猿「チョンチョン(中中)」と妹の「ホアホア(華華)」が中国で誕生して約2カ月が経った25日、「彼女たち」の「物語」が世界的に権威のある米科学誌「セル」電子版のトップページを飾った。中国の科学者が現在の技術では霊長類のクローンを誕生させられないという世界的難題を克服したことを意味する。
中国科学院神経科学研究所非人霊長類研究室の保育器の中で「チョンチョン」と「ホアホア」が楽しそうに遊んでいる。「チョンチョン」の誕生は妹より10日早い。大きさに若干の差はあるが「姉妹」を見分けることはほぼできない。
「姉妹」の遺伝子は、一匹の流産したアカゲザルの胎児から取り出された。そこから体細胞を取り出し、細胞核を取り除いた卵子に移植する「体細胞クローン」と呼ばれる手法で「彼女たち」は生み出された。
国際細胞治療学会(ISCT)のジョン・ラスコ会長は「多くの専門家が実現できないと考えていた技術の壁を彼らは乗り越えた」と中国科学者の成果についてコメントし「優れた科学的方法と技術を駆使し、クローン猿の誕生を長年にわたり拒んでいた障害を克服した」と述べた。
1996年に世界初のクローン羊「ドリー」が誕生してから20年余り、各国の科学者は体細胞を使ったクローンの牛、ネズミ、猫、犬などを誕生させてきたが、人類に最も近い非ヒト霊長類のクローンを誕生させることはできなかった。科学者はこれまで、既存の技術で霊長類のクローンは作れないと考えていた。
中科院神経科学研究所の孫強氏のチームは、5年間の努力を経て、世界の生物学の最前線における難題を克服した。同チームは今後、この技術を利用し、1年以内にゲノム編集と遺伝背景が同じクローンモデルを多数誕生させる見込み。
中科院神経研究所所長の蒲慕明院士は、クローン猿の誕生を「この数年の世界の生命科学分野における重大な成果だ」と語る。クローン猿の成功は、アルツハイマー病や自閉症などの脳疾患、免疫欠陥、腫瘍、代謝性疾患のメカニズムなどの研究や関与、診療に対しこれまでにない明るい見通しを示した。
孫氏は、中国が人類の疾病を効果的に再現できる動物モデルを率先して作り出すことで、脳疾患と高次認知機能研究における切迫した需要を満たし、新薬テストにも広く応用できると述べた。