スタジオジブリとオランダ人監督のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットが手がけたアニメーション映画「レッドタートル ある島の物語」が、昨年末に日本で上映された。日本と外国アニメのコラボである同作品は、ジブリのかつての輝かしい興行成績を再現することは適わず、同時期に上映された「君の名は。」や「聲の形」の人気もあり、その興行成績は散々な結果に終わった。しかし、興行成績がふるわなかった一方で同作品に対する評判は非常に高かった。同作品はエッセイ風の大人向けの童話で、哲学的な要素あふれる命の物語と、シンプルで生き生きとした画風がうまくマッチしていると映画ファンから絶賛された。（文：張禎希。文匯報掲載）
同作品は、暴風雨によって無人島に漂着した一人の男と一匹のウミアカガメが出会い、男の日々の生活が変化していくというストーリー。日本公開前に、カンヌ映画祭の「ある視点」部門で特別賞を受賞している。プロデューサーの鈴木敏夫氏によると、同作品は時間をかけた作品であり、構想に10年、制作に8年を要したという。業界関係者とアニメファンは同作品を「アニメの新たな時代を作った作品」と見ている。これは、昨年のベネチア国際映画祭でジブリの神様ともいえる宮崎駿氏が引退した後、スタジオジブリが制作した最初の作品であり、海外と共同制作した初の作品でもあった。
宮崎駿氏の作品のような、心に突き刺さる言葉が多く、登場人物がしっかりと描かれるスタイルと異なり、上映時間80分の「レッドタートル ある島の物語」にはセリフが一言もなく、登場人物の表情による感情もはっきりしていない。しかし、同作品は人生への考え方や自然への愛情という点において、ジブリのこれまでの作品を受け継いでおり、ドゥ・ヴィット監督は、「この作品を通して、自然と人類の生命に対する深い畏敬の念を伝えたかった」としている。しかし、リズムの早いこの時代に、セリフがなく、キャラクターが無表情なアニメ作品を受け入れる市場ニーズはあるのだろうか？このことも同作品が投げかけている問題の一つだ。
