毎年秋分の日に行われる収穫祭「中国農民豊収節」の上海主会場で、農産品マーケットに展示されたミニカボチャの新品種。(9月22日撮影、上海=新華社記者/張夢潔)
【新華社上海10月31日】中国上海市に住む女性会社員、劉(りゅう)さんの家庭では「ベビーかぼちゃ」がすっかり食卓の「常連」になっている。初めて見た60代の母親は「こんなに小さいのに普通のカボチャよりずっと高い」といぶかしげだったが、栗のような香り、サツマイモのような食感、そしてカボチャの甘みが合わさったおいしさに一家全員が一口で魅了されたという。
レシピアプリで「ベビーかぼちゃ」と検索して出てくるのが、電子レンジの「強」で8分加熱するという調理方法。千人以上が「いいね」をつけている。手間を掛けずにおいしいものを食べたいという現代の若者のニーズに合致したこともヒットの原因になった。もともと日本で開発された品種を上海の種苗開発企業である上海恵和種業が中国で代理販売し、徐々に栽培が拡大した。
毎年秋分の日に行われる収穫祭「中国農民豊収節」の上海主会場で、農産品マーケットに展示されたブドウ。(9月22日撮影、上海=新華社記者/張夢潔)
地元の気候や栽培の特性に合ったミニカボチャ品種の開発も進んでいる。上海市農業科学院は施設園芸や空中栽培を利用、栽培密度を露地栽培の倍に高めると同時に、露地栽培や地ばい栽培で生じる実の腐敗や病虫害の問題を減らし、産品の品質を高めた。複数の新品種の育成にも成功している。
上海ではこれまでなかった作物がますます多く地場でつくられるようになり、食卓の「新たな人気者」となっている。その背景にあるのが、さまざまな新品種の育成や農業生産方式の高度化だ。都市現代農業の発展の道を同市がしっかりと歩み続けていることを示す現象とも言える。
オクラの選別・処理作業にいそしむ上海小生蔬菜専業合作社の作業員。梱包(こんぽう)後、市内に出荷する。(資料写真、上海=新華社配信)
オクラも中国で人気の高まっている野菜の一つ。同市崇明区港沿鎮で2015年から農業を営む徐瑜(じょ・ゆ)さんは当初、トマトやセロリを育てていた。巨大な市場の潜在力を見込んでオクラの栽培に切り替え、今では800ムー(約53ヘクタール)以上で栽培、年間生産額は1200万元(1元=約21円)を超える。800ムーのうち500ムー(約33ヘクタール)では、生食が可能でサラダや寿司に使える「フルーツオクラ」を育て、収穫量は1日当たり15トン前後に上ることもある。
徐さんが責任者を務める上海小生蔬菜専業合作社(協同組合)では現在、130人以上の農家が働き、繁忙期の収穫作業員の月収は最高で8千元を超える。徐さんはさらに周辺の農家を呼び込み、「フルーツオクラ」を地元の特産品産業として発展させている。食卓に登場した「新顔」の作物は、市民のグルメ消費の高度化を促すとともに、農家に豊作と増収をもたらしている。
成熟したオクラを収穫する上海小生蔬菜専業合作社の作業員。(資料写真、上海=新華社配信)
浦東新区にある上海合慶ドラゴンフルーツ荘園は上海初のドラゴンフルーツの大規模栽培拠点で、敷地内には上海市ドラゴンフルーツ研究所もある。56品種のドラゴンフルーツを500ムーにわたって栽培し、ドラゴンフルーツを使った「酵素製品」も開発。美容愛好者の間でここ数年注目されている「フルーツ酵素」は農業の産業チェーンを延長し、農作物の付加価値を二次加工で高め、市場の新たなチャンスを創出している。
毎年秋分の日に行われる収穫祭「中国農民豊収節」の上海主会場で、上海合慶ドラゴンフルーツ荘園が農産品マーケットに展示したドラゴンフルーツと関連製品。(9月22日撮影、上海=新華社記者/張夢潔)
さまざまな優良地場農産品の登場は、人々の多様な食品消費ニーズを満たすと同時に、農村振興の新たな活力を呼び覚ましている。「生の果物が酵素に変わることで価格が何倍にも跳ね上がる」。同荘園を運営する上海合慶火竜果産業の孔芳芳(こう・ほうほう)市場部マネージャーは語る。同荘園の酵素製品は日本やシンガポール、ベトナムなどでも販売され、市場はますます広がっているという。(記者/張夢潔)
上海合慶ドラゴンフルーツ荘園の貯蔵エリアに並べられた、ドラゴンフルーツの入った100個以上のオークたる。(資料写真、上海=新華社配信)