中国の李克強国務院総理は28日、海南省博鰲(ボアオ)鎮で開かれたボアオ・アジアフォーラム2019年年次総会の開幕式に出席し、「ともに試練に向き合い、共同発展を実現しよう」と題する基調演説を行った。(博鰲=新華社記者/龐興雷)
【新華社博鰲3月29日】中国の李克強(り・こくきょう)国務院総理は28日午前、海南省瓊海(けいかい)市博鰲(ボアオ)鎮で開催されたボアオ・アジアフォーラム2019年年次総会の開幕式に出席し、「ともに試練に向き合い、共同発展を実現しよう」と題する基調講演を行った。李克強氏は基調講演で次のように表明した。
▽互恵ウィンウィンを堅持し、世界経済の発展を促進
世界経済は現在、成長を維持しているものの、成長エネルギーが衰え、伸びが鈍化する傾向が見られる。情勢は錯綜して見通せず、市場の自信も揺らいでいる。困難と挑戦(試練)を過小評価してはならないが、悲観や失望をしてもいけない。世界経済にはまだ多くののプラス要因がある。
世界経済の下振れ圧力など共通の挑戦を前にして、わが身だけを守れる国などない。各国は共にチャンスをつかみ、挑戦を迎えるべきで、必ず互恵協力のウィンウィン、マルチウィンの道を探し求め、大きな度量、寛容な心、協調的な行動によって、世界経済の発展に自信を与え、力を添えるようにしなければならない。各国は手を携え共同発展を実現し、国連を中心とする国際システムとルールを基礎とした多国間貿易体制を共同で守らなければならない。中国は自由貿易を提唱し、公平な貿易も同じく主張している。各国はグローバルガバナンス・システムの改革を積極的に図り、共に協議・建設・享受する姿勢を貫き、グローバルガバナンス・システムがより一層公正で合理的な方向へ発展するよう推進しなければならない。別行動を取ってはならず、少数の国の利益にのみ資するのではなく、最大公約数を追い求めるべきである。中国は世界貿易機関(WTO)改革を支持する。その基本原則と核心的価値は必ず堅持しなければならない。
▽アジア各国は心を一つに助け合い、ともにリスクの挑戦を防ぐ
アジアは世界の平和と安定を守る重要な力で、世界経済の成長を後押しする重要なエンジンである。経済の発展、民生の改善を図ることはアジア各国の共通の目標で、われわれはアジア各国と心を合わせて助け合い、リスク・挑戦を防ぎ、発展の余地を広げることを願っている。
また、各国は協力して平和的発展の大きな環境を守り、戦略的相互信頼を深め、相互尊重、協議一致、各国の快適度へ配慮するアジア方式を広げる必要がある。各国は協力して地域一体化の水準を引き上げ、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉で早急にマルチウィンのプランをまとめ、地域一体化メカニズムの整理・統合を進め、一層の活力をそなえたアジア大市場を構築し、「一帯一路」構想と各国の発展戦略との連結を進める必要がある。各国は協力して革新・発展の新たな枠組みを作り上げ、革新協力を強化し、開かれた、公平、透明で、予測可能なビジネス環境を築き、イノベーション資源と成果の共有を進め、アジア経済が革新・発展の道で一層着実でしっかり進むようにすべきだと指摘した。
▽「外商投資法」関連法規の制定と外国企業の合法的権益保護
外商投資法の効果的な施行を確保するため、中国政府は現在、関連法規や規則の制定作業を開始している。これらの制定作業を年内に完成させ、来年1月1日に外商投資法と同時に施行することを確保する。われわれは開放拡大を堅持し、競争中立性の原則を実行に移す他、関連法規や規則、規範性文書を全面的に整理しており、外商投資法と合致しないものは全て、断固として廃止、改正しなければならない。
▽中国は外国企業の合法的権益保護を強化
われわれは内資・外資企業を全て平等に扱い、各種企業の合法的権益を確実に守る。知的財産権保護の強化は、中国政府の一貫した立場だ。現在、専利法(特許法)改正案(草案)はすでに中国全人代常務委員会に審議を求めて提出されている。今回の法改正では、倍額懲罰の賠償制度を導入し、法定賠償額を大幅に引き上げ、重大な権利侵害・模倣者には支払い切れない代価を負担させなければならない。技術の強制移転は認められない。われわれは言ったことは必ず実行し、法に違反した者に対しては法に基づき厳正に対処する。また外商投資企業の提訴のメカニズムを健全化し、政府と外商との意思疎通と協調のルートを円滑にし、外資企業の合法的権益を守る有効なプラットフォームとする。
▽香港・マカオ・台湾の投資政策の連続性と安定性を維持
中国はこれまで通り香港・マカオ・台湾系企業の発展を支持する。「外商投資法」の関連法規では、香港・マカオ・台湾からの投資について、明確で具体的な規定を定めるが、これまで既に実施され、実効性のある同地域への優遇政策に変化はない。投資企業の合法的権益を効果的に保護するだけでなく、さらに多くの発展チャンスをもたらすようにする。また、香港・マカオ・台湾からの投資に対して市場参入基準をさらに緩和し、金融や専門サービス、ハイエンド製造などの分野の開放を拡大する。内地と香港・マカオの人的往来や生産要素の流動を円滑にする政策措置も次々と打ち出していかなければならない。
▽中国経済は年初から安定し前向きな変化も見られる
今年に入って、中国経済は安定し、かつ幾つかの前向きの変化もみられ、市場の予想が大幅に改善された。ここ2カ月間のデータをみると、雇用、物価、国際収支など経済の主要指標が比較的に落ち着き、固定資産投資が着実に増え、消費者信頼感指数、製造業新規受注指数が顕著に上昇し、資本市場の取引が活発になった。特に3月に入り、1日当たりの発電量、電力消費用量は二桁の伸びとなり、輸出入、貨物輸送などの伸びが加速した。
今年は不安定、不確実要素が顕著に増え、外部からのリスクも増しており、各月、各四半期に経済の伸びに一定の振れ幅があることを排除しない。われわれは十分な政策ツールを残している。「ばらまき」式の強い刺激政策は実施しない。無計画に手を広げ、大ざっぱな成長の道を歩むような以前のやり方をしない。短期的成長を維持するために長期的発展を損なうようなやり方は取らない。改革開放を堅持し、市場主体の活力を喚起し、内的原動力を増やし、下振れ圧力をしのぎ、長期に上向く経済を維持する。中国経済をよく観察し、マクロ政策の方向を判断するには、時間軸を長く伸ばし、通年でみる、全体をみる、すう勢をみることに重きを置く必要がある。
▽より大規模な減税・費用引き下げを必ず実現
われわれが約束した、より大規模な減税・費用引き下げなどの措置は必ず実現する。減税・費用引き下げは公平で広く恩恵が及び、直接効果のある改革措置であり、今年市場主体の活力を呼び起こし、経済の下振れ圧力に対応する重要な措置だ。今年の減税と社会保険料率の引き下げ措置で、企業の負担を2兆元(1元=約16円)近く軽減することができる。これは企業にとって極めて大きな好材料だが、政府にとっては重い負担だ。われわれは各級政府が緊縮財政を徹底し、一般的支出を削減し、ストック資産と資金を活性化して、増やした収入と減らした支出を主に減税と費用引き下げに充て、これと引き換えに企業収益の向上と市場活力の増強を図るよう、そして財源を開拓し支出を切り詰め、企業が恩恵を受け人々が豊かになる新たな道を進むよう求めている。
▽外資の市場参入をさらに緩和
中国は外資の市場参入をさらに緩和し、参入前内国民待遇とネガティブリスト管理制度を全面的に実施する。6月末までに、われわれは外商投資参入ネガティブリスト、自由貿易試験区外商投資参入ネガティブリスト、外商投資奨励産業指導目録を再改訂し、発表する。ネガティブリストの項目をさらに縮小し、電気通信、医療機関、教育サービスなどの現代サービス業、および交通運輸、インフラ、エネルギー資源などの分野の対外開放を拡大する。われわれのネガティブリストは引き算だけをして、足し算をしない。また、「禁止されていなければ参入可能」を全面的に実施していく。われわれは各種所有制企業を平等に扱い、公正な監督管理によって中外企業の公平な競争と共同の発展を保障する。また、貿易の円滑化レベルの引き上げを加速し、今年は通関コストを大幅に削減し、通関効率を高める。
▽金融業の対外開放を引き続き拡大
外資に対する銀行、証券、保険業の市場参入の全面的な開放を加速させ、外資系銀行の業務範囲を大幅に拡大する他、外資系証券会社と保険仲介会社の業務範囲に対する個別制限をやめ、信用調査や信用格付けサービス、銀行カード決済、非銀行決済の参入制限を大幅に緩和する。中国は外商投資企業による起業投資や投資会社設立をさらに円滑にし、外国投資家の上場企業に対する戦略的投資や国内企業に対する合併買収に関する規定を整備する。債券市場の対外開放を推進して関連政策を整備し、海外投資家による中国の債券への投資や取引に対し、より円滑な条件を作り出す。
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