蘇東坡がテーマの展覧会「如見:一蓑煙雨・蘇軾展」 の様子。(1月3日撮影、北京=新華社配信/李欣)
【新華社北京1月21日】中国北京市の中華世紀壇世界芸術館で、北宋時代の文学者・政治家の蘇東坡の蘇軾(そ・しょく、蘇東坡)の作品世界をマルチメディアで表現した展覧会「如見:一蓑煙雨・蘇軾展」が開かれている。会場には蘇東坡の書斎「南軒」を再現、当時の衣装を着用した役者も配置し、詩人の生涯の軌跡を生き生きとわかりやすく紹介。没入感あふれた展覧会で「一瞬で宋代にタイムスリップできる」と大勢のファンや観光客を集めている。
「技術が急速に発展した今日、人々は読書や想像での文化の観賞や理解には飽き足らなくなり、文化の魅力を直接体験したいと思うようになっている」。同展のチーフキュレーターを務める清華大学美術学院情報芸術デザイン学科の王之綱(おう・しこう)主任は語る。「今回のような展示方式を通じ、蘇東坡のイメージは書籍を飛び出し、より立体的で生き生きとしたものになった」
蘇東坡がテーマの展覧会「如見:一蓑煙雨・蘇軾展」 の様子。(2024年12月26日撮影、北京=新華社配信/丁梓朔)
小学4年生の娘を連れて来場していた女性は「蘇東坡の詩は小学生のときから勉強していた。デジタル展覧会はわくわくできる学習方法で、自分も勉強になった」と話した。「蘇東坡は想像上の人物という気がしていたが、展覧会を訪れることで、さまざまな内容を具体的に理解できた」
「蘇東坡の『気骨』にほれ込んだ」という70代の顧さん夫妻の言葉は、展覧会の来場者や数多くの蘇東坡ファンの声を代弁している。中国は近年、蘇東坡ブームで、展覧会の開催や文学作品の出版が続いており、関連トピックの検索も増えている。2022~24年には、現代劇「蘇堤春暁」、川劇(四川省の伝統演劇)「夢迴東坡」、ミュージカル「蘇東坡」、現代舞踊詩劇「詩憶東坡」などの公演が注目を集めた。
演劇「蘇堤春暁」の様子。(資料写真=新華社配信)
上海戯劇学院副教授で戲劇文学学科副主任の李世濤(り・せいとう)さんは、蘇東坡は中国文化の象徴であり、浮き沈みの多かった人生はまるでドラマのようだったとし、「幾多の苦難にもめげず、人生に対する楽観的でおおらかな態度を常に保ったことが、多くの人々の共感を得たのでは」と語った。
「如見:一蓑煙雨・蘇軾展」 の様子。(1月3日撮影、北京=新華社記者/李欣)
蘇東坡ブームは多くの都市で文化観光産業の盛り上がりにつながっている。長江上流の岷江(みんこう)河畔の眉州(現在の四川省眉山市)から中流の黄州(現在の湖北省黄岡市)を経て、下流の浙江省杭州市、さらには海南省儋州(だんしゅう)市に至るまで、関連する遺跡や遺構は18都市500カ所余りに及ぶ。
王チーフキュレーターは、蘇東坡を知ることは文化を伝えることであり、人生への態度を学ぶことでもあると語った。北京師範大学文学院講師の余丹(よ・たん)さんは、蘇東坡の詩は私たちの精神世界を豊かにする力の源泉であり、日常の暮らしを潤すせせらぎでもあると述べた。(記者/李欣、楊陽、王坤朔)