前漢時代の諸侯墓から大量の黄金が出土、用途を検証

前漢時代の諸侯墓から大量の黄金が出土、用途を検証

新華社 | 2024-09-27 11:19:26

  【新華社南昌9月27日】中国江西省南昌市にある漢代諸侯の墓、海昏侯劉賀(りゅう・が)墓では金器480点が出土している。総重量は115キロで、これまでに見つかった漢代金器の合計を超えた。発掘専門家グループでリーダーを務める信立祥(しん・りつしょう)氏は、出土数の多さを漢代遺跡で随一と評していた。

南昌漢代海昏侯国遺跡博物館に展示されている金器。(資料写真、南昌=新華社配信)

  出土した金器は種類も豊富で、文献に残る漢代の主要な金貨である金餅(きんぺい、金貨)、馬蹄金、麟趾金、鈑金(金の板)の4種類がそろい、古代社会で黄金が果たした役割を理解する手掛かりとなっている。

  黄金はまず、貨幣としての機能を持っていた。漢は秦の制度と共に、黄金を上幣、銅銭を下幣とする伝統も受け継いだ。当時の黄金は価値を表すために広く用いられた秤量貨幣であり、定められた価値に基づき銅銭と交換できた。交換比率は時代や地域によって異なっていた。

20日、南昌漢代海昏侯国遺跡博物館に展示されている馬蹄金。(南昌=新華社記者/袁慧晶)

  劉賀の内棺の底板に置かれていた金餅100枚と主椁室(ひつぎを納めた部屋)西室から出土した金餅189枚はいずれも前漢の法定貨幣だった。金餅の多くは表面に「V」「上」「下」「重」などの記号が押印または刻印されていた。南昌漢代海昏侯国遺跡博物館の彭明瀚(ほう・めいかん)館長によると、当時は金の品質を調べる設備がなく、専門の検査者が経験と眼力のみに頼って純度や等級を判断していたため、金餅の流通過程で行われた検査の痕跡が残されているという。

  初めて出土した鈑金20枚も貨幣の機能を持っていた。薄い板状で大きさや重さはそれぞれ異なり、中には切断痕が残っているものもあった。純度は同じ墓から出土した黄金の中で最も高い99・9%。鈑金が富の象徴であり、金貨や金器の原料にも、秤量貨幣にもなり、支払いや銅銭への交換の際に重量分を切り取られていたことを示している。  

  黄金は祭事のための拠出金「酎金」(ちゅうきん)としても用いられた。漢代の制度では、諸侯王や列侯は毎年8月の祭りの際、所領の人口に応じて朝廷に黄金を献上することになっていた。黄金の重さや純度が不足していた場合、領地の削減や没収という罰を受ける可能性もあった。  

20日、南昌漢代海昏侯国遺跡博物館に展示されている100枚の金餅。劉賀墓の内棺の底板に置かれていた。(南昌=新華社記者/袁慧晶)

  劉賀の外棺頭箱内から出土した金餅96枚はいずれも酎金として使用できるもので、うち5枚には劉賀が朝廷に献上するために用意した酎金であると墨書されていた。彭氏は、文字をつなぎ合わせると「南藩海昏侯臣賀所奉元康三年酎黄金一斤」となり、漢代の王侯が献上した酎金は当時流通していた金餅であり、照合のため献上者の氏名を記載するよう求められていたことを示していると説明した。また残りの91枚には過去に出土した漢代の金餅に見られる文字や記号がなく、酎金用として特別に鋳造された可能性があると指摘。金餅が副葬品となったのは宗廟で祭りに参加し、酎金を献上することができなかったからだとの見方を示した。

  黄金はさらに、吉祥の象徴として皇帝から下賜された。劉賀の墓から出土した馬蹄金50枚、麟趾金25枚はいずれも中空で傾斜した形状を持ち、瑠璃、玉、オパールなどの宝石がはめ込まれていた。多くは外側の底部に「上」「中」「下」の字が見られた。

  彭氏は、馬蹄金や麟趾金が出土した際に金餅や鈑金と分けられていたことから、特別な金貨だったとみる。馬蹄金は「天馬蹄」、麟趾金は「白麟趾」と名付けられ、紀元前95(太始2)年に鋳造が始まった。武帝が記念金貨として制作し、諸侯王に下賜したもので、他の者による所有や模造は不可能であり、劉賀の墓から出土した馬蹄金と麟趾金は、父である初代昌邑王劉髆(りゅう・はく)から受け継いだと推測されるという。

20日、南昌漢代海昏侯国遺跡博物館に展示されている鈑金。(南昌=新華社記者/袁慧晶)

  漢代には死者を手厚く葬る習慣があったとされる一方、黄金を副葬するケースは珍しく、劉賀の墓が発掘される前に出土していた前漢時代の黄金は合わせて約82キロだった。劉賀の墓から大量の黄金が出土したのは、劉賀の死後に宣帝が海昏侯国を廃止したため、身分や地位の象徴と見なされていた黄金を自身の子に受け継がせることなく、副葬するしかなかったのが大きな理由だという。

  劉賀の墓から出土した大量の黄金はまた、前漢が「金多き王朝」であることを考古学的見地から実証した。統計によると、前漢の歴代皇帝が下賜した黄金は89万漢斤余り(約223トン)に上る。今年1月末時点で中国の金準備高は2245トン。彭氏は、2千年余り前に現在の金準備高の1割近い量が用いられたことになると紹介した。(記者/袁慧晶、譚茜予)

海昏侯劉賀墓から出土した墨書金餅。表面に「南藩海昏侯臣賀所奉元康三年酎黄金一斤」と記されている。(資料写真、南昌=新華社配信)

海昏侯劉賀墓から出土した金餅。(資料写真、南昌=新華社配信)

海昏侯劉賀墓から出土した、「上」の字が刻印された大型馬蹄金。馬蹄金50枚のうち大型の17枚は純度約99%、小型の33枚は純度約98・6%。(資料写真、南昌=新華社配信)

海昏侯劉賀墓から出土した、「上」の字が刻印された麟趾金。麟趾金25枚の純度は98・9%で、1枚を除き全てに「上」「中」「下」のいずれかが刻印されていた。(資料写真、南昌=新華社配信)

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