【新華社マカオ12月12日】中国マカオ特別行政区の歴史地区に足を踏み入れると、時空の扉が開いたかのような感覚に包まれる。未舗装の路地、歴史を感じさせる古い廟や教会、中国と西洋の建築様式を融合させた建物が、400年を超える街の変遷と栄華を語りかけてくる。
祖国復帰後、媽閣廟や鄭家大屋、三街会館など22の建造物と8カ所の広場で構成された歴史地区が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録された。明清時代の海上交易の港から、中国文化と西洋文化が交錯する場所、さらに復帰後の多元的に発展する特区へ至る歴史の中で築かれた建物や通り、路地の一つ一つが、心打たれる物語を秘めている。
7日、観光客でにぎわう大三巴牌坊(聖ポール天主堂跡)。(マカオ=新華社配信/張金加)
空から見たマカオの媽閣廟。(11月1日、ドローンから、マカオ=新華社配信/張金加)
マカオを象徴する建物、大三巴牌坊(聖ポール天主堂跡)はこの歴史地区にある。ここは聖ポール大学の遺構に当たる。
春節(旧正月)や国慶節、祖国復帰記念日などには、大三巴牌坊周辺が重要なイベント会場となる。行政区政府はイベントのたびに「聖ポール音楽会」を開催し、マカオの文化遺産の魅力をアピールしている。市民や観光客は心地よい音楽と共に祝日を楽しんでいる。
古い通りを歩くと小さな八角形の中国風の建物が現れる。繁華街にひっそりと建つ青緑の瓦屋根と赤い窓枠が印象的な建物は、八角亭という図書館で、元はマカオ中華総商会付属の図書室だった。マカオで初めて一般に開放された中国語書籍の図書館であり、現存する最古の中国語書籍の図書館の一つでもある。
八角亭は読書や学習の場にとどまらず、多くの市民の憩いの場となっている。マカオオーラルヒストリー協会の陳淑怡(ちん・しゅくい)副会長は「八角亭は単なる建物ではなく、文化を伝える施設。この建物を通じてより多くの人にマカオの歴史と文化を知ってもらいたい」と話す。
7日、マカオの大三巴牌坊(聖ポール天主堂跡)の前で写真を撮る観光客。(マカオ=新華社配信/張金加)
歴史地区ではさまざまな様式の建物との思いがけない出合いも多い。中国初の西洋式劇場、ドン・ペドロ5世劇場(崗頂劇場)もそうした建物の一つといえる。
淡い緑色に白いリボンのような装飾が施された外壁、濃い緑色のドアと窓、赤い屋根の劇場は、黄色を基調とした建物が並ぶ聖オーガスチン広場(崗頂前地)周辺で、ひときわ異彩を放ちつつも調和を崩してはいない。劇場の内装はシンプルかつエレガントで、かつては最先端の舞台装置を備え、コンサートやオペラ、演劇が盛んに上演された。
劇場は祖国復帰後に大規模な修復が行われた。特区政府は古いものは古いまま修理するという原則に従って改修したため、劇場は元の姿を保ち、マカオの文化遺産保護のモデルとなった。
八角亭図書館で新聞を読む人々。(10月30日撮影、マカオ=新華社配信/張金加)
古い建物を長く生かしていくために、特区政府はここ数年、文化施設や文化財のある観光地をイベント会場として活用している。
特区政府文化局職員の周剣明(しゅう・けんめい)さんは「そうした文化プロジェクトはその美しさで見る人を楽しませ、さらに古い建物をよみがえらせることにもなる」と語った。
マカオ歴史地区観光は、目を楽しませ、心を満たすだけでなく、味覚の楽しみにも事欠かない。奥まった路地には無数のグルメが潜んでいる。ポークチョップバーガーやポルトガル風エッグタルト、アーモンドクッキーなどは、観光客に中国と外国の文化の融合を感じさせる。
特区政府文化局の梁恵敏(りょう・けいびん)局長は「マカオの世界遺産建造物の保護制度をさらに整えていく」と述べ、マカオは中華文化を主軸とした多文化共生の交流・協力拠点づくりに努めていくと説明した。
7日、中国初の西洋式劇場、ドン・ペドロ5世劇場(崗頂劇場)の前を歩く人。(マカオ=新華社配信/張金加)