許可を受けて日本の岡山県で試験飛行する、中国企業が開発した電動垂直離着陸機(eVTOL)。(11月29日撮影、岡山=新華社配信)
【新華社南京12月11日】こんなシーンを想像してみてほしい。あなたが万里の長城に登り、高く険しい山々の絶景を楽しんでいると、空からドローンがゆっくりと降りて来て、入れたてのコーヒーを配達してくれる。
これはSF映画のワンシーンではない。こうした光景は、中国で低高度を飛ぶ有人・無人航空機を活用した経済活動「低空経済」が発展する中で、現実に起きていることだ。
北京市は、八達嶺長城沿いに市内初のドローン物流配送ルートを開設した。長城に登って喉が渇いたら、もうコンビニまで山道を50分歩く必要はない。スマートフォンを操作するだけで、コーヒーもコーラも5分で配達されることになる。
許可を受けて日本の岡山県で試験飛行の準備をする、中国企業が開発した電動垂直離着陸機(eVTOL)。(11月29日撮影、岡山=新華社配信)
中国のもう一つの大都市、上海では、多くの低空貨客ルートが開通しており、「空中タクシー」を呼ぶと、上海浦東国際空港から江蘇省昆山市まで、車で2時間かかる距離をわずか約25分で運んでくれる。
データによると、中国の低空経済の規模は2023年に5千億元(1元=約21円)を超えた。今年は、中国の政府活動報告に「低空経済」が初めて盛り込まれた。
地上約千メートルの空域を巡り、中国の多くの都市が勢いに乗って取り込みを始めた。北京、上海、深圳、蘇州を含む数十の都市が相次いで、低空経済発展を支援する政策を打ち出した。中国民用航空局の推計によると、中国の低空経済の市場規模は2025年までに1兆5千億元に達し、35年までに3兆5千億元に達する見込みで、市場の将来性は大きく広がっている。
江蘇省常州市でラインオフした中国のスタートアップ企業「白鯨航線(AirWhiteWhale)」が開発した大型無人貨物機「W5000」。(10月18日撮影、常州=新華社配信)
蘇州を含む中国の6都市が電動垂直離着陸機(eVTOL)の実証プロジェクトを予定しており、これは将来のeVTOLの標準化にとって重要な意義を持つ。eVTOLはヘリコプターのように垂直に離着陸する空の乗り物で、滑走路を必要としない。実証に当たって策定されたルートやエリアに関する計画では、一部の地方政府に600メートル以下の空域の管理権限を与えている。
蘇州市はすでに低空経済産業面で、研究開発から製造、応用に至る全産業チェーンを形成し、200億元を超える特別資金支援を提供しており、今年は300件以上の関連プロジェクトが新たに締結され、総投資額は900億元を超えた。
蘇州市と隣り合う無錫市では、ハンガリーの軽飛行機メーカー、マグナス・エアクラフトが開発した2人乗り軽スポーツ機の運用が始まった。同社によると、この軽スポーツ機の最高時速は256キロで、燃料を満タンにすれば1600キロ飛行できる。同社は今後さらに無錫で空中体験や緊急救助、飛行訓練などの分野向けに、より多くの軽飛行機を開発していく予定だという。
江蘇省無錫市で桃を輸送するドローン。(6月8日撮影、無錫=新華社記者/何磊静)
無錫市政府のデータによると、地域には現在、低空経済関連企業が160社近く集積し、30の低空産業基金が設立され、総延長1320キロに及ぶ32本の低空飛行ルートが開設されている。
これらの航空機は、移動や物流に加え、農業などの分野でも大活躍している。中国の田畑では施肥や農薬散布、播種(はしゅ)などをドローンに任せることができる。中国農業農村部のデータによると、国内の植物保護ドローン保有数は16万6700台を超えている。(記者/何磊静)
広東省で開催された低空科学技術展示イベント。(11月23日撮影、広州=新華社配信)
江蘇省無錫市の展示館に展示された軽量スポーツ航空機。(11月13日撮影、無錫=新華社記者/何磊静)