中国蘇州大、新型の超小型原子力電池を開発

中国蘇州大、新型の超小型原子力電池を開発

新華社 | 2024-09-24 16:32:03

新型アクチノイド系超小型原子力電池の構造設計理念を示した図。(蘇州=新華社配信)

  【新華社南京9月24日】中国の蘇州大学(江蘇省蘇州市)は21日、原子力電池の研究で大きな進展があったと明らかにした。同大の研究チームが一種の内蔵型エネルギー変換器に基づき、アクチノイド系元素を使った超小型電池の構造設計理念を提案し、新たな原子力電池を開発した。研究成果は19日、国際学術誌ネイチャーに掲載された。

  原子力電池は放射性同位体の崩壊により生成されるエネルギーを電力に変換する装置で、論文の共同責任著者、蘇州大学放射線医学・放射線防護国家重点実験室の王殳凹(おう・しゅおう)教授によると現在は主に2種類に分けられる。一つは放射線による昇温の温度差を使う発電で、体積が大きく、価格も高いことから利用環境は限られる。もう一つは、放射性同位体の崩壊で放出されるベータ粒子を半導体に照射して電流を発生させる方法だが、発電効率が低いという。

  王氏は「アルファ線のエネルギーはベータ線の数十倍から数百倍に上る」と指摘。アクチノイド核種、中でも超ウラン核種のアメリシウムは半減期が非常に長く、アルファ崩壊で放出されるエネルギーが大きいことから、高効率の原子力電池に製造に可能性をもたらすと述べた。

  共同筆頭著者の李凱(り・かい)同大副研究員は「従来の超小型原子力電池の配置は、放射線源とエネルギー変換ユニットが分離されており、(放射線が放射線源に吸収される)自己吸収がアクチノイド・アルファ崩壊エネルギーの変換を著しく妨げていた」と説明。アメリシウム原子は列に並ぶ人のようなもので、各人が放出するエネルギーが隣の仲間に吸収されるため、エネルギーを効率よく変換できなかったと述べた。

暗い条件下で発光する自発光試料。(資料写真、蘇州=新華社配信)

  「アメリシウム原子をエネルギー変換ユニットで囲めば、エネルギーは周囲に吸収されて変換されるため、エネルギー変換効率は大幅に向上する」。李氏によると、研究者らは希土類(レアアース)のテルビウムを含む配位高分子結晶(TbMel)を合成し、結晶格子にアメリシウム243を配置。アメリシウム243の崩壊で放出されたアルファ粒子エネルギーが周囲のランタノイド元素テルビウム(Tb)に極めて効率よく蓄積され、発光現象を起こすことを発見した。

  研究チームが優れたエネルギー変換効率と単位当たりの放射能強度に基づき開発した新たなアクチノイド系超小型原子力電池は、200時間の連続運転でも性能パラメーターの低下がほぼ見られないという。

  同じく共同筆頭著者の閆聡沖(えん・そうちゅう)同大副教授は「アルファ線はエネルギーが高いものの透過力は非常に弱く、紙一枚すら突き抜けられない」と説明。新型の原子力電池は充電やメンテナンスが不要で、数百年間の安定発電が期待でき、安全性も高く、放射線漏れを起こさないので、航空宇宙や人工知能(AI)設備、医療機器、超小型電気機械システム、センサー、小型ドローン、マイクロロボットなど小出力で長時間の使用する機器に利用できると語った。(記者/陳聖煒)

本ウェブサイトに関するご意見、ご提案等が

ありましたら xinhuanetjp@126.com までご

連絡ください。