人工角膜の反射弓と人間の天然角膜の反射弓についての説明図。(資料写真、天津=新華社配信)
【新華社天津12月5日】中国天津市にある南開大学電子情報・光学工程学院の徐文濤(じょ・ぶんとう)教授によるチームがこのほど、感覚を持つ人工知能(AI)角膜の設計と概念実証を行い、人工角膜が人間の角膜にさらに一歩近づいた。
薄くて透明な角膜だが、実は身体の神経が最も集中しており、異物が触れると不随意にまぶたを閉じる反射(角膜反射)を起こす。ここ数年の間にボストン型(Boston角膜プロテーゼ)やMICOF型(MICOF角膜プロテーゼ)など複数種類の人工角膜が開発され、すでに臨床治療に利用されている。ただ、これらの人工角膜は人間の天然角膜による保護や光屈折の機能を代替できる一方で、触覚の感知能力は備えておらず、光や目に進入する異物に反応して角膜反射を実現することはできない。このため、感覚を持つ人工角膜の開発は移植用の角膜不足の解決や、角膜疾患の治療において大きな意味を持っている。
徐教授のチームが開発したAI角膜は、人工的な反射弓(反射の神経経路)によって角膜が本来持つ感覚を再現。センサー発振回路を受容体に、亜鉛スズ酸化物(ZTO)繊維の人工シナプスを情報処理のコアに、エレクトロクロミック素子(ECD)をアクチュエーターにして、外部からの機械的刺激や光の刺激のコード化や情報処理、透過光の調整を実現した。また、デジタル制御によってアライメントされたZTO繊維を人工シナプスのチャンネルとすることで、シナプス可塑性の長さを調整する新たな方法を見いだした。ZTO繊維は長く連続的で、環境に優しく無毒、コストが低く、透過率が99・98%を超え、ヘーズ(曇り度)が0・36%未満の光学性能を持つなどの優れた点があり、結晶構造を精密に調整できることで長さの調整が可能なシナプス可塑性が確保され、連合学習や暗号化通信に応用することができる。
研究成果はこのほど、国際的に著名な学術誌「ネイチャー・コミュニケーション」で発表された。
徐教授によると、研究チームはAI角膜をロボットに装着して概念実証を行ったところ、眼輪筋を模した組織が収縮し、天然の角膜同様に保護や触覚の感知、光屈折の機能を持つだけでなく、光の感知と環境への応答という拡張能力によって、光の強さが絶えず変化する環境の中で目にさらなる適応的保護を提供できることが示されたという。
徐教授は「将来、最適化を経て成熟したAI角膜が神経の修復や視覚の回復といった分野で広く用いられることになるだろう」と語った。(記者/張建新、高雨桐)pagebreak
AI角膜を装着したロボットによる概念実証を示す図。(資料写真、天津=新華社配信)