20日、北京市西城区の「社区食堂」で料理を選ぶ高齢者。(北京=新華社記者/許芸潁)
【新華社北京10月23日】中国各地でここ数年、社区(コミュニティー)住民向けに栄養バランスの取れた食事を安価で提供する「社区食堂」が、高齢者の食事を支える重要な柱として急速に発展している。企業情報サイト「天眼査」によると、運営主体は20日時点で4700社を超える。社区食堂は地域住民の食の需要を満たすだけでなく、高齢者のよりどころにもなっている。
20日、北京市西城区の「社区食堂」で、メニューを紹介するスタッフ。(北京=新華社記者/許芸潁)
北京市西城区の社区食堂で食事をしていた高齢者の男性に話を聞くと「1回の昼食代がわずか10~20元(1元=約20円)。おいしい料理をおなかいっぱい食べられるし、近所の人たちとおしゃべりもできる。高齢者にとって便利なサービス」と語った。5月のオープン以来、ほぼ毎日利用しているという。店のスタッフによると、60歳以上を対象に割引を実施していることもあり、利用者の8割以上を高齢者が占める。
浙江省杭州市西湖区北山街道の「社区食堂」で食事をする高齢者ら。(資料写真、杭州=新華社配信/秦宇杭)
人気の理由は手ごろな価格と行き届いたサービス。各地の民政部などの部門が高齢者の食事支援を充実させるため実情に応じた政策を策定し、さまざまな助成金を出している。一部の社区食堂では移動に支障がある高齢者向けに宅配サービスを実施したり、糖尿病や通風の患者に適した特別食など高齢者の個々のニーズに応じた食事を提供したりする。
5月22日、江西省南昌市青雲譜区岱山街道の梨園南社区(コミュニティー)で、一人暮らしの高齢者、周桂蓮(しゅう・けいれん)さん(87)の自宅に食事を届ける「社区食堂」のスタッフ。(南昌=新華社記者/彭昭之)
江西省南昌市青雲譜区に4カ所ある社区食堂でも、60歳以上の高齢者は食事代が割引される。90歳以上の人は無料になるという。上海市静安区の静安寺街道では、高齢者カードの保有者に15%の割引を適用。割引部分は街道政府が助成している。
吉林大学公共衛生学院の栄養・食品衛生研究室の謝林(しゃ・りん)教授は、人口の高齢化が進む中国では高齢者の栄養摂取が重要な問題となっていると指摘。社区食堂が増えることで、専門的な栄養管理が広がれば、多くの高齢者が適切に栄養を摂取できるようになると語った。
社区食堂は食事サービスを提供するだけの場所ではなく、社交の場でもある。高齢者たちは食堂でおしゃべりや交流を楽しみ、精神的な支えや安らぎを得ることができる。人との交流は高齢者の孤独感や喪失感を取り除き、社会参加や帰属意識を高め、心身の健康に良い影響を与えている。(記者/許芸潁)