中国人にとって、旧暦大晦日に家族で食べる「年夜飯」は、一年で一番大事なご馳走といえる。豪華なおかずがたくさん並ぶからだけではない。家族が集まって心を通じ合わせる得難い機会となるからだ。年夜飯の食卓には、食欲をそそる香りが漂っているだけではなく、笑い声と楽しいお喋り、家族の情があふれている。年夜飯に人々が深い思いを寄せるのはそのためだ。
年夜飯は、家族の再会を象徴し、祝福がこめられた大切な食事だ。だからこそ見た目もよく、香りも高く、味もおいしいことが求められ、その用意は、家庭の主婦たちの料理の腕が試される機会となるのである。中国は広大で、人々の飲食の習慣も南北で大きな差がある。江南地方の「元宝茶」、湖北の「排骨藕湯」(豚バラと蓮根のスープ)、四川の「麻辣香腸」(山椒と唐辛子の味のソーセージ)、東北地方の「小鶏燉モ菇」(鶏肉とキノコの煮込み)、地方によって形は違っても、年夜飯を代表するこれらの品々はいずれも、忙しい中で人々に喜びを与え、郷愁を呼び起こさずにおかない食べ物となる。
年夜飯はそれほど重要である。しかし豊かで口に合う年夜飯を作るのは簡単ではない。時間と精力を要するだけでなく、一定の料理の腕も求められる。だが現代人は仕事が忙しく、生活のテンポも速い。ゆっくりと時間をかけて食材を選び、精魂を込めて年夜飯を作る余裕などないという家庭も多い。こうした状況で、レストランやホテルが打ち出す年夜飯サービスは、多くの市民のニーズを満たしている。高級なものから庶民的なものまで多様な選択肢があるほか、自分で仕上げができる半製品も売り出されている。
経済面だけを考えるなら、レストランで取る年夜飯は家で作るより高くつくことは間違いない。だが大晦日にレストランの予約がきまって一杯になるのは、市民の消費能力が高まり、消費観念が変わりつつあることを示している。年夜飯サービスの登場は市民の生活を便利にしただけでなく、予約の殺到は売り手にもビジネスチャンスを与え、市場経済の下での「ウィンウィン」を形成している。近年は、「国外で食べる年夜飯」というコンセプトで春節(旧正月)期間の海外旅行を打ち出す旅行会社も増え、「洋装」がまとわされた年夜飯も登場した。
家で手作りする年夜飯からレストランで選ぶ年夜飯、海外で楽しむ年夜飯まで、中国伝統の年夜飯は華麗な転身を遂げつつある。年夜飯の移り変わりからは、消費観念の変化がわかると同時に、発想の覚醒、さらには社会文明の進歩までもが見て取れる。人々は新たな食のトレンドを楽しみ、前進する中国の幸せの味をかみしめているようだ。
(チャイナネット)
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